【全起こし】後藤政志:元東芝、原子炉格納容器設計者、工学博士。格納容器設計者の観点から、福島第一原子力発電所の事故の分析を行っている。 ●沢井・皆さんこんばんは。東京の原子力資料情報室から中継をはじめさせていただきます。今日は先生と安全性の問題について放送しようと思っていたのですが、放射性廃液の問題で新しい情報が入ってきましたのでそれについて今日も後藤政志さんにお話いただきたいと思います。で、今あの原子炉の建屋(たてや)の中からですね、タービン建屋のほうにそしてトレンチのほうに、たくさんの、たぶん原子炉の中からというふうに考えられますが、放射性物質が混ざった汚染水が大量にたまっている、そしてそれをどうやって除去したらいいのかということが大きな課題になっております。で、復旧作業等のさまたげになるということでこの大量の水を、どうやって違う場所に移動させるかということが、今、東京電力や政府が一生懸命考えていることなんですが、それに関して新しい情報が来ましたので、ちょっとご紹介いたします。 であの、以前の放送でも後藤さんが、たとえばですね、「バージとかタンカーとかで船に積んだらいいんじゃないか」というご意見を述べていたのですが、今日入ったニュースなんですけど、静岡県の清水市にあります、清水港海釣り公園というところに、「メガフロート」という、浮体部を海の上に浮かべた海釣り公園があるんですね。そのことについて大変なことがわかりました。というのは清水市がですね、緊急の要請を受けまして、その海釣り公園を、今度の福島の事故のその汚染水の容れ物といっていいんですか、収容する施設として使いたいということで、なんと東京電力がそのメガフロートをですね、静岡県から購入して、それを三菱重工が再整備して、4月10日には原発の岸壁に持って行きたいというような提案があったということです。 で、あの私たちも大変びっくりして、このニュースを受けとめました。 で、この汚染水の問題をもう一度最初から後藤さんにお話いただき、そしてこの大量の汚染水をどういうふうに処理していったらいいのか、処分していったらいいのかという方向性についても改めてその次にお話いただく予定です。 ●後藤・皆さんこんばんは。後藤です。今日はですね、原子力、…放射性物質を大量に含んだ水をどうするかっていう話なんですけど、その処理をどうするかということをめぐって、ま、たまたまですが船の話が出てきまして。…実は私ですね、昔原子力をやる前は海洋構造物の設計をずっとやってきたんですね。で、船とかこういう作業船、あのプロペラのない船を「バージ」っていうんですが、はしけですね要するに、そういうものを比較的エンジニアリングとしてやってきた人間なんですね。その観点もありますので、今日はさきほど沢井さんから話がありましたように、本来フェールセーフの話をしようと思っていたんですが急遽変更させていただきました。で、大体1時間以内で終わるようにいたします。 えとですね、これが前お見せしましたように、こちらに原子炉、使用済み燃料プールがあって、まあ格納容器、原子炉があると。で、タービンがあって、タービンのほうに蒸気が来て、ここで、復水器で水に戻ると。で、このタービン室の下に、非常に多くの水がたまっているということですね。ここの水が非常に汚染しているんではないかと。で、同時にですね、これをポンプで復水器に戻そうとま、そういう話だったんですね。で、それをですね、非常にほうっておくと、その水があふれてきて、海に流れる可能性があると。もうすでにですね、そうでなくても海を汚染しているんですね、始まって (続き2)すでにそうでなくても海を汚染しているんですね。すでに始まっているんです。ですけどさらにですね、大量の放射性物質を含んだ水が海に流れ込んだとすると非常にまずいんですね。ですから、なんとかそれをとめようと。しかしとめようとしましたけれども、その水を復水器、さきほどのですね、復水器に戻そうとしたんですけど、ここに、復水器にはすでにいっぱい水があって、これを出さないとこれを入れられないと。汚染した水を。つまり、外に空のタンクがいっぱい要るんですね。相当な要領が要るはずです。数千トン規模で要るんですね。あの、トータルすると数千じゃない、万の単位になるんじゃないかと推測されます。そうしますとそういった状態でいったいどうしようかということでですね、あのこちらにあるのは別の話なんでコーティングとか散布した合成樹脂とか別の話です、これはちょっとおいておきまして、とにかくタンクを新設して、水を移設する、こういうことを考えたいわけですね。ですけど考えて見ますと、今ここが水位がいっぱいで今にももれようとしているときにですね、タンクを作るなんて間に合うはずがないんです。陸上に大きなタンクを作るのには、それなりの時間がかかるんですね。数週間では難しいですね、月の単位になると思います。そうすると、そういうことをやったんでは間に合わない。で、それで前ちょっとお話したようにですね、空のタンカー、またはほかの形でもいいんですが、船ですね、船を持ってくるのが一番、あのひとつの解決策ですね、とりあえずここにおく。で、恒常的にここにおけるかというと、それはちょっと別問題なんですけど、こういう(陸上のタンクのような)恒常的な設備ができないときにはですね、緊急避難的にこういうのをやるのはですね、非常に有効なんです。なぜかと申しますと、大きなタンク、たとえば数千トンとか一万トンとかあるタンクをちょっと考えてください。これをこういうところに作るというのは大変な工事ですよね。ですけど船というのは、もう一度船を建造するのは間に合わないです。これからでは。ですけど、もうできているわけですね。で、船というのは水が漏れないように設計されているんです。そうすると逆に言うと、外から水が漏れないということは、中に容れても漏れないんBです。ですから、…本当はですね、放射性物質を閉じ込めるのに妥当かというと、原子炉格納容器のように気体も全部閉じ込める。これが一番いいんです。ですけどそれは今かなわないですね。無理なわけです。そうすると、気体についてはあきらめて、液体については漏れないように閉じ込める、それがひとつの解答であると。まあ、ほかには方法がないのだから、やむをえずということですね、そういうことになるかと。それで、今の作業の内容をもう一度振り返ってみるとですね、各プラント、炉心がまだ冷え切っていません。まだ非常に安定してないんですね。冷え切ってないんで、ずっと崩壊熱というものが出てます。それを冷やしていかないと、また解けてしまいます。さらに、非常な危険な状態になりえます。ですからそれを防ぐために、ずっと水を注水してるんですね。そうすると注水しますから、これがどこかで水が漏れてるんですね明らかに。漏れて炉水の水がどこかにたまっている。それを今移送しようとしている、こうやってるわけですね。ですけどこれに限度がありますので、それをこれがあふれてはいけないので、タンカーまたは船にという、こういうことなんですね。 で、そう考えますとですね、対策としてはどう考えるかということですね。で、短期的に大量の汚染水を貯蔵するには、やはり今言いましたように、私は船舶が最適だと思います。これは私の個人的な見解ですけど、できればその船員が乗らなくていいような船、つまりこれ、タンカーなどはですね、自航船といいまして、プロペラがあるんですね、で、この場合には人が乗らなければならないんです。そうすると万一何かあった時には、その汚染している水をですね積んだ船に乗るということは非常に危険を伴いますから、それだったらバージですね、箱型の船、ちょうどこの、先日、米軍ですね、米国からバージで真水を供給しているというのがありましたね、ああいう手の船です、はしけですね要するに。あれはタグボートで引っ張ればいいんです。でそうすると、そういう形でやりますと、タグボートのほうには人が乗りますけれども、バージのほうには人は乗らなくていい、最初にポンプのつなぎこみとその作業だけでいいんですね。そのほうがはるかに被ばくする量も少ないというふうに思います。で、ですから、緊急時なんでですね、そうしますと、このどういうふうにこの考えるかということなんですが、実はこの間、私も、本件で働きかけをしています。政府にですね。で、あのまあいろいろ国会議員の方とか通じたりしたんですけど、なかなかうまくコンタクトはできませんでした。で、したんですけど、まあいろんなこと考えているんだからそれでいいということで、なかなかこちらの案が通ったわけではありませんけれども、どうもやはり緊急時なんで、これは私の見解ですけれども、いわゆる少数の、あまり多くの人数ではだめなんですね、やっぱり。ある分野のわかる人が少数、それぞれの分野の人を任命して、その人が非常に、この機動力を持つというか小回りの利く、で決定権も与えてですね、背、その人たちがプロジェクトを実行する。そういうことが非常に(すみませんこれプロジェクトがプロジュクトになってますね)重要だと思います。プロジェクトというのはですね、共同してみんなで作業をやるということなんです。仕事をすることですね。そのときに、ちゃんとその役割分担と、どっからどういうふうに決めて実行するかですね、それがきちんとしてないと、あの、こういうあいまいなって言いますかね、目的が非常に難しい、目的はわかっているんですけれども、そこにいたるプロセスがいろいろあるみたいなのは非常に難ししいんですね。それをどうやって組織化するかなんていうのは非常に問題なんですね。それが失敗すると、結局何をやっているかとなって、また後手後手になります。で計画立案に当たっては種々の条件を考慮の上、特に私が思いますのは、放射性廃棄物、放射能に関する専門の知識を持った人、および船舶関係の専門家ですね、これがプロジェクトに入ることがやはり絶対に必要だというふうに思います。で、まあ、この点はただしですね、この今の状況とか各種の条件によるので、もちろんほかの方法がないと言っているわけじゃありません、ひとつの案としてこういうことも考えられるということなんですね。 で、先ほどお話がありましたメガフロートですが、ちょっと調べてみたんですけど、浮体の部分がですね、メガフロートといって、メガというのは非常に大きいということなんですね。大きな、フロートというのは浮体です。で、こういう大きな浮体構造物を日本中いくつか設置してるんですね。で、もともとはどういうものかというとですね、これは、空港なんかですね、空港なんかに使っていたんですね。ちょっとお見せしましょう。 これはですね、日本船舶海洋工学会という旧造船学会なんですけど、海洋関係と一緒になったもので、そこでメガフロートの研究というのをやっています。で、私も数年前まで、ここのメガフロートの研究の、特にリスク評価ですね、安全性の評価に関する委員会のメンバーだったんですね。で、こういう、これは浮体式の空港です。で、長さがたとえば小さいもので、1500とか2000メートル、大きいやつだと4000〜5000メートルなんですね。そういうこういう空港です。ここにこの空港本体があって、これをこのこれらの設備があるんですが、イメージはこんな感じですね。 これが横から見た時ですね、これが空港の本体です。これが少し拡大して大きく見るとこういうふうになって空港があるんですね。これにいろんなビルがあって、これが浮いているわけです。で、それを係留、ここにMooringと書いてあるのは係留という意味で、いろんなやり方があるんです。チェーンでやるのもあれば、こういうふうにドルフィン型とあるんですが、このアクセス、ここに行く交通ですね、でブレークウォーターってこれは要するに防波堤ですね、こんな形になっているんですね。こういうものを検討していたわけですね。 で、実際こういうように船体、船と同じような構造をしているんですけれども、一番の問題は、深さが5メートルとかせいぜい10メートルとかですね非常に浅いんです、長さに対して。たとえば5000メートルあって、(深さ)5メートルってすごいでしょう。1/1000です。そうすると構造物で見るとですね、こう波が来るとプカプカっと、波の間に間にこう動くってそういう構造なんですね。そういう種の構造です。 ま、これはそこ係留するとこですけれど。こんなことを評価していたんですね。(24分) ま、これは細かいことだからいいですけれどね、話を元に戻させていただきますと、で、そういう研究をしまして、空港とか、空港はひとつの例なんですね。ほかにも風力発電用の洋上風力、なんかも検討の課題になっていました。そのほかにも緊急時のですね、今回ありましたような、津波があってああいう被害があったと、それに対する緊急支援用、あるいは病院とかですね、そういう観点のこういうフローティングタイプの建造物は研究対象になっていました。で実際にこれは各地域でどちらかというと比較的小型のメガフロートを造って、まあ実験的にいろんな公園なんかに使っていたんですね。その話がさきほどの(静岡清水港のものです)。 で、これを湾のところに係留して、まあ普通の船を係留しているのと同じようですね。こうやって海釣り公園として使うということなんです。これは静岡県の清水市です。で、静岡港の海釣り公園ということでこういうふうになった。大きさはですね、それほど大きなものではありません。長さが138メートルの、幅が40と何メートルくらいですね。深さが3メートルとこんな感じです。で、これをちょっと図面を見ていただきますと、これが上から見た形になるんですね。これが何かって言うと、この、チェーンですね。チェーンで引っ張ってるんですね。でこのこういうふうに浮いていまして、これを係留っていうyんですけど、これが流れてしまうといけないんですから、こういうふうにの、チェーンを引いて、チェーンとここにブロックがついてる、シンカーっていうんですけど、こういうふうにつけて係留するんですね。そうすると多少の移動はするんですけど、流れていかない、とこういう格好にします。で、浮体を扱うってどういうことかというと長期的には、こういうふうに係留する、あるいは一緒に並べてつけるという手もありますけど、なんらかの手段で動かないようにしなきゃいけないんですね。それが課題になる、だろうと思います。で、実はこの話を聞きましたときに、あの私は非常にいいアイデアだと。つまり、あの、この海釣り公園利用されてる方には申し訳ないけれど、緊急時なんでこれを譲っていただいて使うというのは、それはいい考え方なんだろうと思います。ただ、技術的な課題があります。これが私の一番言いたかったことなんですけど、136メートルです。幅46メートル。で、深さが3メートルなんです。これが心配なんです。どういうことかっていいますと、長さと深さの比率が45.3倍なんですね。これがどういうことを意味するかって言うと、これに12って書いてあります。これがですね、実は、これ、メガフロートですね。大体長さと深さって言うの、船においてはですね、この比率がですね、この比率が大きすぎると、波が来たときにその曲がってしまうんですね。で、先ほど言ったメガフロートっていう設計はですね、ある程度限定したその閉じた海域、そのどういったらいいんですかね、港湾の中、防波堤の中、で波が限定されているところで使えるものなんです。洋上に、非常に大きな波がある所に行ったら、とてももたないんです。強度が。というものなんですね。 で、普通の船はどうかって言うと、バージとか船はですね、大体この(長さと深さの比率が)8倍から12倍くらい。20倍って言うのは特殊です。これは特殊な湖のところとか、とくにやむを得ずこうなったときに、この強化してですね、非常に板圧をあげて薄くして、鉄板の板圧をあげてやるということはありますが、これはちょっと異例なんですね。だいたいこれ(8〜12)が普通なんです。そうするとこれが数十から数百というのは、これは非常に閉じたところでないと使えない。それをもし今のまま、45倍くらいですから、普通に考えると洋上に持ってくるのは難しい。という結論になります。 で、その意味はこういうことなんですね。船を設計するときには、船が浮いてます。これに重量と浮力の力が、重量は下向き、浮力は上向きで力がかかるんですけれど、それプラス、この波があるんですね。この波によって、ここ(中央部分)が持ち上がります。そうすると、ここが持ち上げられて、(端は)重力で落ちますから、こういうふうに船体はこういうふうに曲げられるんですね。上が出っ張るように、下が縮まるように、そういうふうに曲げられます。これをホギング状態といいます。逆に波がこうなり(端の部分を持ち上げ)ますと、重力で(中央部は)下に落ちますよね。波の力で(端は)上に上がりますよね。するとこれはこういうように曲げられる。これをサギング状態といいます。いずれにしても真ん中には、曲げようとする大きな力がかかります。モーメントって言うんですが、この力が船の設計をするときの一番ポイントなんです。で、その比率が、大体せいぜい10いくつとか20くらいでないと普通の船は設計できない、という関係なんですね。 それが45というのは非常に薄いので、どういうふうにするのかということが課題になります。 それで、ひとつはですね、問題になりますのは、ここのところ先ほど言いましたように、こういう形(ホギング・サギング)で、もし洋上に持っていけないとなると、どうことをやるかというと、海洋関係でやるやり方のひとつはですね、ま、へんな言い方ですが「船の上に船を載せる」そういうやり方がひとつあります。それで引っ張っていくんです。その代わりその台船はどうなるのかというと、台船はそういうふうに普通の寸法のサイズの船でないと無理なんですね。その上に乗せていくことは、できないことではありません。それが1点ですね。 あとは、非常に波のないときに、さっとうまく行けるかと。これはですけどね、すごくリスクがあります。たとえば、(箱が)3メートル以下だったらいいとしますよね。ところが3メートルだからいいやと思って行ったら、少し荒れて4メートルになったと。ところがないことはないですよね。海ですから。 普通はそういうことはやらないんですね。危ないですから。 しかし、こういう緊急時ですから、そういうリスクも覚悟してやるという考え方もないとはいえない、という感じになると思います。 ただ、繰り返しますと、普通に造船関係ですね、船の関係をやっている人間がぱっと見て、「あ、これは心配だな」と考える技術的な課題がある。 決してケチをつけるつもりではありませんが、そういうことはわかっているよと。わかってるからちゃんとコントロールする、というふうなプロジェクとですね、そういうふうにしないと、大体失敗します。で、まあ、今回のいろんな原子力の事態を見ているとそう思っているんですけれど、ある状態に対して、一番きちんと最悪の状態を捉えてやってないのが見えるんですね。そうするとその最悪の状態というのを甘く見てたら、対策というのは、できないんです。ですから常に、こういう非常に、危機管理的なプロジェクトというのは、一番最悪の状態を押さえながら、まあ、うまくいったらそれをはずしながらですね、いくつかのこの、方法をいくつか並べておいて、これがだめだったらこれ、というようにやっていくのが当然なんですね。そういうやり方をきちんとやっていかないとうまくいかないんではないかと、思います。 で、特にこの中で気になるのは、こういうことですね。 「後手後手に回らない」。 もう当然なんですけど、後手後手にまわっちゃだめです。ですから私が気になったのは、提言したかったのは、「もうこの状態では船関係しかないか」と思ったので、当然船とかなんか手配をされてるでしょうと(申しあげた)。で、今回船の手配を始めたという点に関してはわかりました。 たらですね、それぞれのプロジェクトで少人数のチームをそれぞれの課題ごとに作って、有機的、柔軟に運用するというのが非常に重要なんですね。それを大きな組織をピラミッドにして、全部を動かそうというのは、危機管理的には非常に難しいんですね。ですからひとつのプロジェクトを動かす、個々のプロジェクトを作って、ある程度の権限をを任せる。ということをやって、最終的にそれを集約していく、そういう格好をとにかく常に取る、ということが問われているんではないかと思いますね。そこのところを間違うと、あのおかしなことになると思います。 で、常に先ほども申しましたように、「常に最悪を考え、バックアップをとる」。 これは自明のことですね。ですから、先ほど申しあげた、タンクをもってくるのであれば、それに対するバックアップをどうするか、船がこっちがわにすると、船がだめだったらどうするか。常にそういうふうに考えるということですね。 それともうひとつ、これは、こんなことはあってはならないんですけど、「利権が優先するようなことにならない」ということですね。ともすると、大体こういう危機的な状態の中で、こういう案もある、あるいはこういうやり方もある、という話になったときに、その利権がらみの話になってくると、非常にまずいんですね。 ですから、もちろん企業がやるとすると、利益のことも関係はあるんですが、それは抑えて、本当にこの問題に対して、有効なやり方が何かということに焦点を絞っていく、この姿勢を貫かない限りはですね、成功しないと思います。 つまり、自分のところの会社の都合なんかでこのプロジェクトが動かされるようであっては、もう日本は最悪だと思います。こういう状態下にあっては、ある船なら船の関係、ほかの関係もいろいろあると思います、その人たちが自分たちの(立場から考えるその対応のトータルの)メリットデメリットを全部出してですね、本当に何か、ということを議論を進めてやる、そういうことをやらない限り、このプロジェクトは失敗する、そういうふうに確信しています。 で、原子力(発電所)のところで、実はそれはうまくいってないのではないか、そういうことをずっと私は危惧しているんですね。 そういう観点から、せめてですね、こういう周りの支援をするときに、あの海外からも支援すると言ってきてます、それも非常に必要で重要なことです。ただし、それも気をつけなきゃいけないのは、利権とかいろんなことが絡んできます。ということも、総合的に判断して進めていくのが、難しさでもありますが、重要なことであると思います。というふうに私は認識してます。 で、ですから、各分野の専門家の意見を反映する、特に、専門家の意見を反映することをぜひやっていただきたい。専門家の、ある分野の専門家の意見がわかってる、自明のことをですね、すっ飛ばしてそのままいくようなことがあると、これは最悪になるということを、これは繰り返し申しあげます。 で、あとはですね、総力を結集することの意味ですね、さきほど申しあげましたように、一部の人のものではないわけです。みんなのためになるわけですからね。それをどうやってやるかということを、本気でやらなくちゃならない。そのための力の結集だと思います。 で、ひとつ感じましたのは、まあ、現在政府のほうでやってるやり方をですね、まあいろんな意見も有りますし、集約も難しいですから、外からの声は届きにくいといいますか、聞いてられないだろうということもあるかと思います。ま、それはそれでやむをえないとは思います。 ただ、お願いしたいのは、是非ですね、そういう、当然と思いますが、そういう(関連)各部門の専門家を配して、技術的な評価というものをきちんとできる体制を作る、ということは最低限度のことなんですね。それができなかったらまずいと思いますので、ぜひそれをお願い申しあげます。で、私はこういう案を… (プロジェクターには 「まとめ・◆後手後手に回らないようにする! ◆少人数のプロジェクトを課題ごとにつくり有機的・柔軟に運用する ◆常に最悪を考え、バックアップを考える。 ◆利権が優先するようなことにならないように! ◆各分野の専門家の意見が反映するプロジェクトにしないと失敗する! ◆総力を結集することがとにかく必要!」) 支持するところがありますけれども、それは単にひとつの案だろうというふうに考えていまして、 むしろそういうことよりも、本当に申しあげたいのは、必要な技術者をちゃんと動員して、必要なプロジェクトを作って、それが実行できるようにすること、そういうことを、政府主導でやっていただきたい、ということです。というふうに思うわけですね。それが私の今日の見解です。 フェールセーフと技術の問題をするつもりだったんですけれども、この問題はちょっと重要だというふうに思いまして、あえて発言させていただきました。 一応私のほうは、とりあえず以上です。 何か質問等がありましたら。 ●Q(沢井)・そうすると、この汚染水の除去なんですけれども、2つあると思うんですが、バックアップっていう、そのバックアップの体制というか、どういうプロジェクトのチームが、これをやるのかというところで、今大きな後藤さんのご提言があったのですが、後藤さんがご覧になって、今東京電力が、やろうとしている体勢に関しては、やはり少し疑問があるというふうに考えてよろしいのでしょうか。 ●後藤・ええと、そこまではわからないわけです。私は中のことはわかりませんし、決して今のが絶対いけないと、そんなことは言うつもりはありません。今の状態は、提言してもなかなか政府に届かないんですね。いろんな意見があって交錯しているし、まあいろんな意見があるでしょう。それはしかたがないと思っています。ただ、こういうことを有効に機能させるようなやり方をする、それが絶対に必要で、それが時々ですね、たとえば私が気になったのは、メガフロートという話がぼんと出てきて、実際に動き始めたと。そうしたら当然なんですが、メガフロートというものはどういうものであって、何に限界があって、そういうものは造船、技術的にわかっていると思うんですが、ぱっと見てそのまま、洋上を引っ張ってくるとなると、本当なんですか、と私なんかは思うんですね。そうすると、これはたまたま私がそういう分野専門にやってたからそう思うわけであって、普通には気がつかない可能性がある。そうすると、いろんな分野を総合的に、何か課題をやるプロジェクトというものは、それぞれの技術的なバックボーンを持った人たちが寄り集まって、意見を自由に言って、確認しながら行くというのが(必要であるということは)自明のことなんですね。そういう組織を是非作っていただきたい。それができないと、さきほど申しあげましたように失敗すると、そういうふうに、これは確信しております。 ●Q・やはり地上のタンクよりも、船舶、船とかバージなどの試用が有効ということなんですね。 ●後藤・と思いますね。はい。そういうことです。 ●Q・とすると、メガフロートの場合でも可能なメガフロートってあるんでしょうか。 ●後藤・そうですね、おっしゃるとおり、それぞれメガフロートって言っても、1例で45倍くらいですか、長さと深さ、メガフロートって大体大きいのを言うんで、実際こう比率が大きいのになってしまいますが、別にメガフロートに限る必要はないっていうのが私の意見なんです。そうじゃなくて、普通のバージでいいんですよね。大体比率が12と15くらい以内のしっかりした強度のバージがあればいいんです。ただまあ、どのくらいあるかという問題があるんですね。つまり、今供給できる船として普通のバージがあるのかどうか。そうするとそれは実際に使われているものを運用するとすると、その経済的な問題もあるわけですよね。それをどうやって利用できるか。そういう形になるかって言う、難しい問題もあるかもしれない。今のように海釣り公園のようなものを利用するというのはやりやすいからたぶん考えたんだろうと思いますが。ですから、それは否定はしませんけれども、それをやるとしても、技術的なバックボーンの確認、ちゃんとですね、それを同時並行で行うのが、自明のことだと思っているのです。 ●Q・で、あの、このもしバージとか船に積み込んで汚染水を抜き取ることができても、逆に原子炉の冷却を続けていれば、どんどん水は増えていくわけで、いつも常に移送することが必要になってくる。 ●後藤・そうなんです。あの対症療法なんですね。とりあえずなんです。緊急避難です、これは。ですから、船の上(中)に置いていいなんて、ずっといいなんて言えないんです。で、船の上に摘むということ葉ですね、万一たとえば嵐がきて、バージが壊れるということになると、またそれから汚染水が出るということになりますね、当然ね。そうすとそういうものに対する対策とかを考えると、そんな簡単ではないんです。確かに。ですけど、少なくとも湾内に入れて、それで係留してですね、壊れる可能性を極めて少なくして、そういうふうにしてやる形で、で、もうひとつは、私はですね、究極というか、いよいよ危ないとなったら、浅瀬があったらですね、砂浜浅瀬のところにですね、バージ乗り上げさせちゃう。で、沈没はしない状態を作るっていうくらいまで覚悟しなければいけないんじゃないかというふうに思ってます。そうすると、ええと、浅い、遠浅のところがあればですね、引っ張って遠浅のところに船をあげてしまうっていう、ちょっと乱暴ですけどね。それで維持できればもう少し時間的な稼ぎはできるだろうと。ただ、最終的にはそこからも抜いてですね、処理する形をとらざるをえないんで、陸上に大きなタンク作る、施設作る、そういうことは必要だというふうに思います。 ●Q・船とかバージにいったん積み込んでも、近い将来には、きちんとした処理タンクなりに持っていかなければならない。 ●後藤・そのまま積み込んでおくことはできないですね。ただ、考え方として葉ですね、危険性との関係で行くと、まあそれはいいか悪いか別にしてですね、洋上に石油を備蓄しています。大量に日本は。あの感覚なんですね。タンカーのでっかい、タンカーではないですけど箱舟に、ものすごい大容量の石油を備蓄しているんですよ、日本は。それで浮かせてるんです。同じなんです。ただ、中身が放射性廃棄物、放射性を帯びた水であるという違いである。極端に言うとそういう感覚なんですね。ただ、設備がそういったきちんとしたものでないので、危険が伴うということになる。長い間には嵐とかそういう問題をどうするか、そういうことを考えながらやらなければならない、そういうことですね。 ●Q・ただ、福島沖の場合、今東京でもですね、私たち日常的に余震を感じる状況なんですけど、 ●後藤・はい、そうですね。 ●Q・そうするとまた地震が起きて、津波が来たりとか、そういう可能性もあるんじゃないかと思うのですが。 ●後藤・そうですね。津波の問題はありますよね。津波に関しては大きな津波が来ると、それは結構大変だと思いますですね。ただ、あの、置かれた位置と船の環境によるんですね。船の場合には。普通は津波が来ると船の場合は、沖に出してしまいますね。沖に出せば津波の影響はなくなる。ただそれが間に合わなければ困るということですね。逃げるのがね。そういう問題はあると思います。ですから、あのそういう意味で私が申しあげているのは、ひとつの案として出してますけど、いろんなそういう問題点が出てきます。ですからそういうことを評価をしてですね、これに関してはこう、これに関してはこう、それで、一番有効であるだろうと思う方法をとるしかないんですね。 今の問題があるからといって、じゃあそれを、船をやめたときには、陸上で水は出せない、そうしたら水がそのまま出てしまう、どっちがいいか、という選択になってしまうというふうに私は思います。 格納容器ベントと同じです。格納容器ベントはいけない、放射能出しちゃいます。でもそれは爆発よりましなんで、という危機管理的な意味合いでしかないと私は思います。 ●沢井・それでは一応じゃあ、このお話はここまでにします。 ●後藤・はい。 ●沢井・それで原子炉の状況なんですが、やはり状況としては、燃料は熔けている、そういう状況は変わらない、と考えてよろしいのでしょうか。 ●後藤・ええと、情報があったかな。これかな。 ええとデータを、詳しいデータを今日のデータをちょっと確認してないんですけど、ええと大きな動きはないと思っています。 で、まだ1号機ですね、1号機の冷却がまだ十分ではないですね。それで、ただ議論としてありますのは、ちょっとこれは絵を見ないとわかんないですから――、 ここの、圧力容器のこの表面の温度、前お話ししてますように、吸水口ですかね、吸水口のノズルの辺だと思います、この中間のところと、カーブのところ、2箇所で温度を測っています。で、温度がこちらが高くてこちらが高い、あるいは逆、こちらが高くてこちらが高い、まあそういうこと、がどういうことなのかという解釈ですね。それをめぐっていろんな意見が飛びかってます。 で、どうもここ(上部)が高くて、ここカーブの部分が冷たいということは、水があって、冷えてるんじゃないかと、そういう意見であるわけですが、この、ここ(圧力容器)の中身がよくわからないんですね。 で、ひとつ気になるのは、非常にかなりこう(核燃料が?)崩れてですね固まった状態になって、溶融状態になって、仮になっていたとすると、そういうものはすごく、表面に泡ができて、そこで熱が伝達しにくくなって、外には水の冷却が行くけど、中は水の冷却ができないって言うような状態になりがちなんですね。そういう状態になってるとすると、あまりこう冷やすのが難しくて、なかなか冷却しない、だからほんのちょっとの、ここの入ってくる水と出てくる熱のこれのバランスで温度が維持しくんですけれども、なかなか冷えてこない、そういう形になるんだと思います。ただ、温度が上昇していかなければですね、一応、それなりに大丈夫なんじゃないかなというふうには思っています。 あ、すみません、ただですね、ちょっと気になるのは、圧力容器が壊れてるんじゃないか、抜けてるんじゃないか、っていう表現ですね。まあ、圧力が、格納容器と圧力容器との間の圧力が近いんですね。均一化している。ということは抜けてるんじゃないかと、そういう心配ですね。そうするとどのようになっているか。ここが熔けて落ちているんじゃないか、そういうことになってきますと、これはかなり深刻な問題になってくるんですね。そういうことがどうなってるかを心配しています。ただ、周囲の状況から、それが、(圧力)容器の底が抜けてきてる、というような情報があるわけではありません。もう少し詳しく見ないとわかりません。 ただ、いずれにしても困るのは、まだこの(1号機の)冷却が完全にできているわけではないこと、それから格納容器がどっか破損している可能性が高いこと、2号機は特にですね、でほかの号機もよくわからない。ということは、ここ(圧力容器?)から出た水が、炉水が出てくるということはそういうことですね。こうつながっているわけで。まあ、2号炉はかなりそういう可能性が高いわけで、そうすると、これ(炉水)はどんどん出続けるということになりかねないんで、それが一番深刻な問題だというふうに私は思います。 ●沢井・ありがとうございました。今日の話はこれで終わらせていただきます。明日はゲストをお招きする予定です。原発のサイトでは、今たくさんの作業員の方が、放射能の危険の中で作業されています。これは非常事態で、作業に従事されている方もそのご家族も、本当に心配されていますが、なんとかしてこの事故を収束させようということでがんばっていらっしゃいます。 で、原子力発電所は、実はこのような事故がなくても、たくさん被ばく労働者というのを出しています。私たちはたくさんそういった実態を見聞きしていまして、実は嶋橋伸之さんという方の、浜岡原子力発電所で働いていて、そして白血病で亡くなられたという事実があります。で、そのお母さん、砂橋みちこさんはですね、どうして息子は白血病で死ななければならなかったかということで労災認定で闘われまして、そして、国に認められました。明日はですね、そのお母さん、嶋橋美智子さんにこちらにおいでいただきまして、お話を伺いたいと思います。現在の予定では午後3時から中継を行いたいと思わせていただきます。よろしくお願いいたします。 では今日はこれで終わります。後藤さん、どうもありがとうございました。