【第26夜】
パレスチナ問題(4)
国境設定恐れるイスラエル
イスラエルにタカ派政権の登場によって、中東和平の前途に大きな暗雲が巻き起こっ
た感がする。しかし、世界平和にも大きな影響を与える中東地域の動乱はなんとか食い止め、世界の諸民族の共存協和をはかりたいものだ。
パレスチナ問題の解決にはイスラエルとパレスチナ自治政府間の話し合いが基本で
あることはもちろんであるが、これまで度々申し上げたように、この問題を作ったの
は、戦前のイギリス帝国主義であり、戦後のアメリカの中東の石油を支配しようとし
て政策の果たした役割は大きい。もちろん、1947年11月に国連総会が、300
0年前の神話を基礎にしたアナクロニズムの「イスラエル」国家をつくってしまった
国連の責任も大きい。パレスチナ問題の真の平和的解決は世界全体の責任であろう。
今回は、”安定した国境”の確定を恐れるイスラエルの膨張主義について報告したい。(『パレスチナ問題』亜紀書房を参照されたし。)
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国境を確定したがらないイスラエル
イスラエルは全世界の中で、唯一つ今もって国境を定めぬ特異な国である。
1948年5月14日、イスラエル国家が宣言されたその夜、国境を定めるにあたって激論が闘わされた際に、ベン・グリオンは次のように述べている。
「一例として、アメリカ独立宣言を取り上げて見給え。そこには領土の限界など何
も言われていない。われわれの国家の限界を述べる義務はない。アラブはわれわれに戦争を仕かけてきている。もしわれわれが勝てば、ガリラヤの西部地域とエルサレム
への道路の両側にある領土は、この国家の一部となるだろう。なぜならわれわれが自らを縛ってしまう必要があるだろうか。」
ゆくゆくは「大イスラエル」と呼ばれる古代イスラエルの版図である「ナイルから
ユーフラテスまで」という「歴史的イスラエル」の夢の地図がイスラエルの国会議事
堂の玄関にかかげられているとことや、イスラエルの国旗にあるダビデの星の上下の
水色の二本の線がナイルとユーフラテスであるなどという説は、シオニストの野望をうらずけるものである。
もう一つのエピソードを上げよう。1968年1月22日の「ニューズ・ウィーク」
は、ジョンソン大統領はエシュコル首相に「あなたは私に国境を保証しろと要求して
いる。どの国境をあなたは私に保証してくれと言うのか」と尋ねたと報じている。
事実、イスラエルは、1917年のバルフォア宣言の「パレスチナにおける民族的
郷土」は、次第に「パレスチナの中の民族国家」に変わり、1947年の国連分割案
では、ユダヤ人国家はパレスチナの面積の56%を占め、エルサレムは国際管理下に
置くものとされた。それが、1949年の供せん協定ではアラブ人に割り当てられた
地域を含め80%に拡大し、更に1956年のスエズ戦争では、英仏の侵略戦争の露
払いの侵略を始め、国連の十数回の勧告のあとやっと撤退したものの、その代償とし
てチラン海峡を握った。さらに1967年の中東戦争では、イスラエル本土の4倍半の広大な土地を占領した。
そして、シャロン政権は、聖地エルサレムを「イスラエルの不可分の永遠の首都」
して完全主権を主張、ヨルダン川西岸の入植地は保有し、領土の返還もすでにパレス
チナ側に渡した「占領地の40%」でおしまいと、公約していると言う。こうした国連決議への挑戦こそ、国連の厳しい糾弾を受けるべきではなかろうか。
最後に一つ付け足すと、これはイスラエルにとって最も耳の痛い話しであり、アメ
リカでは、この種の本は、アメリカの本屋では買い占められて、焼き払われるとか、
アメリカの議会図書館にも置いてないということである。それは、よくユダヤ人は2
000年の流浪の果てに、祖先の地、神との契約の地に帰って来たと吹聴しているが、
実際には、今のイスラエルの殆どのイスラエル人の祖先は今のパレスチナにいなかったのである。
ヨーロッパで迫害を受けたユダヤ人の多くは、ユダヤ教に改宗した他の種族の個人
から成り立っている宗教的ユダヤ人であり、この種の典型的な例は、紀元740年に
多くの貴族や臣下とともにユダヤ教に改宗したカザ-ルの王ブ-ランである。ポーランドや南部ロシアには、このグループからの血統を辿るユダヤ人がなお多い。
もし宗教だけで民族を構成できると言うのなら、熱心は仏教徒の祖国はインドだろ
うか。宗教はあくまで、個人の心の問題であるべきである。アメリカの国務省も原則的には、「ユダヤ人の国籍という概念は、国際法において無効である」と言う解釈をとっている。
先年亡くなった世界的に有名なバイオリニスト、エフディ・メニューヒンの父親に
あたり、反シオニズムの優れた学者であるモシュ・メニューヒンは、『現代における
ユダヤ教の堕落』-ーこの本もアメリカでは出版、販売は出来ないと言われているーー
の中で次のように述べている。
「預言者のユダヤ教が私の宗教であって、ナパーム弾のユダヤ教-『ユダヤ』民族
主義ではない。『ユダヤ』民族主義者-ー戦闘的ユダヤ人の新しい実例-ーは、私に
関する限りユダヤ人ではなく、ユダヤ人の道徳や人間性の一切の感覚を喪失した『ユダヤ人』のナチである。反シオニズムは、反ユダヤ主義ではない。」
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