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諸留能興20110424児童生徒を殺す文部科学省に抗議を!
諸留能興20110415過去の主な原発事故
諸留能興20110404今、日本全国の水道水が危い!!
諸留能興20110402放射線量「単位」の正確な理解を!
諸留能興20110331ICRP基準値の根源を問う!
諸留能興20110330僕と素粒子原子物理学

諸留能興20110424児童生徒を殺す文部科学省に抗議を!

既に4月19日、文部科学省は、「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」と題する公文書[23文科ス第134号 平成23年4月19日]を、福島県下の各教育委員会に発令・通知しました。(詳細は文部科学省のURL参照)学校での安全基準値を【年間で20mSv/y(ミリシーベルト毎年)、1時間当たりに換算すると、3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)とし、この値以下であれば校庭など野外活動しても問題なし】とするとんでもない内容である。

この文部科学省の暴挙に対し、4月21日、「福島老朽原発を考える会」をはじめ、福島県下の市民団体が、問題の安全基準値撤回を求め、文部科学省・原子力安全委員会と交渉を行いました。しかし、出席した文部科学省と内閣府原子力安全委員会担当者は、ほとんどの質問に対し回答することができず、安全基準の根拠も全く曖昧で、3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)の決定に至る審議経過も、発令した最終責任機関がどこかも曖昧という、驚くべき内容であった! この交渉(Yu-tubeで視聴可能)はこちらのURL参照

福島の保護者の悲鳴にも近い絶叫を 「どうせ反原発の少数過激な連中の毎度のことだろう!」と、思う人がいらっしゃるのなら、「軽々に速断する」前に、自分の放射性安全基準値に関する知識が、どこまで正確に理解しているか、3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)の数値の持つ意味を、真っ先に深く問い直すべきでしょう! 昨日4月23日(土)同志社大学新町キャンパス「臨光館」で開催された、~福島原発同時多発事故の原因・影響の真相を総合的に解明する~(エントロピー学会 春の緊急集会)でも、ジャーナリスト広瀬隆氏の、大阪大学教員福本敬夫氏、國學院大学教授菅井益郎氏、京都精華大学教授山田國廣氏各位の、熱のこもった政府、文部科学省、原子力安全委員会、東京電力への抗議の声、とりわけ文部科学省の3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)暫定基準値設定への怒りの声が寄せられていました! 以下、今回文部省が福島県下の児童生徒学生に【強制した殺人基準、不法行為】に他ならない3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)という数値が、如何に途方もない値であるかを説明する。

(ポイント1)

福島県内の全ての学校の汚染状況がどうなのか?を、「福島県放射線モニタリング小・中学校等実施結果」の集計結果から確認されたい。「放射線管理区域」(0.6~2.2μSv/h)相当の学校が55.5%、「個別被ばく管理」が必要な学校が20.4%、これら2つを合わせると、福島県下の小中学校等の実に75.9%(75%以上)が「放射線管理区域」以上のレベルにまで放射線汚染が深刻化しています。東京電力福島第1原発から60キロ以遠の福島市内の全学校52校の運動場など校舎外の地面から50cmの高さの空間線量(すなわち外部被ばく線量)の平均値が3.5μSv/h(マイクロシーベルト/時)の高い値が4月19日の文部科学省調査結果からも計測されている。政府や原子力安全委員会、原子力安全・保安院が設定している20キロ圏・30キロ圏が、全く何の根拠もない型式的な避難設定であることは、これだからも明らかである。

(ポイント2)

この「放射線管理区域」とは、「放射線による障害を防止するために設けられる、法令で決められる地域」のことです。労働安全衛生法令を始めとする各種法令を摺り合わせて出来た法令です。その目的も「放射線の不必要な被ばくを防ぎ、放射線量が一定以上ある場所を明確に区域し、不必要な立ち入りを防止するために一定の放射線量に応じて法的に設定される区域」のこと。この「放射線管理区域」詳細はこちらのURL参照

(ポイント3)

ここで重要な点は、文部科学省が事故以前まで承認してきたこの「放射線管理区域」の基準値を、今回の福島原発事故後に、いきなり変更した点である。それも児童生徒の健康と生命を保護すべく安全基準値を厳しく抑え、より少ない値へ「下方修正」したのでなく、児童生徒の健康と生命を一層危険に晒すより高濃度の3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)へと「上方修正」されたことに注意して欲しい!!

(ポイント4)

人体への放射線障害は一定度はやむを得ないとする放射線被ばくを大前提として設定されている国際放射線防護委員会(ICRP)の基準値でさえ、1990年の改訂基準に従えば、職業人の場合は20mSv/y(ミリシーベルト/年)、一般人の場合は1mSv/y(ミリシーベルト/年)、厳密には250μSv(マイクロシーベルト/3ヶ月)と勧告している。今回文部科学省は、ICRPのこの基準値、1mSv/y(ミリシーベルト/年)=0.114μSv/h(マイクロシーベルト/時)の安全基準値さえ無視し、ICRPの定めた基準値の、実に33倍のも高濃度の3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)以下なら安全である!と宣告したのだ! 国会審議も経ず文部科学省通達という省令で断行した!

(ポイント5)

ICRPの基準値1mSv/y(ミリシーベルト/年)=0.114μSv/h(マイクロシーベルト/時)は成人の基準値ですから、発育期の児童生徒の方が成人より被ばく発症率の高い事、及び体内被曝の可能性も考慮に入れて、更に半分の0.057μSv/h(マイクロシーベルト/時)としても当然である。しかし文部科学省の基準値は、児童生徒の感受性を全く考慮に入れていない。京都大学原子力工学の小出裕章教授もこの0.057μSv/h(マイクロシーベルト/時)を元に計算し、「ICRPの70倍まで我慢させるという、この度の文部科学省の通知は、というとんでもなく高い基準値である」と文部科学省を強く非難、抗議しています。

(ポイント6)

労働基準法が18歳未満の未成年に禁じている値の【約6倍】もの高濃度放射線量を、児童生徒に被曝させても構わない!と、文部科学省が決定・宣言したのである。今回の文部科学省の基準値変更は明らかに「不法行為」である! 労働基準法第62条《改正》平11法160(危険有害業務の就業制限)「満18歳に満たない者に・・・有害放射線を発散する場所・・・その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない」。こちらのURL参照

(ポイント7)

今回文部科学省は始めに3.8μSv/h(マイクロシーベルト毎時)の基準値を決めたのではなく、ICRPの1990年の改訂基準値の【職業人の基準値20mSv/y(ミリシーベルト/年)】を児童生徒にも機械的に適用しただけである! 又は、国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばくの状況における公衆の防護のための助言)の「事故継続等の緊急時の状況における基準値」の20~100mSv/y(ミリシーベルト/年)と、「事故収束後の基準値」の1~20mSv/y(ミリシーベルト/年)の境界値の20mSv/y(ミリシーベルト/年)を、機械的に、取り出し強引に適用させ導き出したものでしかない!

(ポイント8)

なお、4月21日の安全基準値撤回を求める諸団体と文部科学省・原子力安全委員会との交渉の場では、文部科学省は、20ミリシーベルトの根拠はICRPの「事故収束後の基準」(1~20ミリシーベルト)と「事故継続等の緊急時の状況における基準」(20~100ミリシーベルト)の中間の値であることを認めたが、しかしそれは文部科学省のホームページの記載内容とは異なっている。

(ポイント9)

ICRPでさえ、成人一般人の場合は1mSv/y(ミリシーベルト/年)と決められている。にもかかわらず、学校現場での安全基準値を、あろうことか、発達段階の児童生徒に【職業人の場合の基準値】20mSv/y(ミリシーベルト/年)を、機械的に「情報シフト」させ「泥縄式に当てはめた」のである! 事実、文部科学省は団体との交渉の場でも、「子供にも大人と同じ基準を用いているかといわれれば、そのとおり」とはっきり回答した!

(ポイント10)

ICRPの「事故収束後の基準」とする1~20mSvの範囲のうちの最大値である20mSv/y(ミリシーベルト/年)の値は、成人原発労働者が白血病を発症し、厚生労働省から労災認定を受ける線量に匹敵する。これほどの高濃度の年間20mSv(ミリシーベルト)=3.8μSv/h(マイクロシーベルト/時)の値以下であっても問題はない!と文部科学省が決めたことは、労働基準法が18歳未満の児童に禁じる値の6倍もの放射線被曝しても、文部科学省は放置すると決定・宣言したことでもあり、全く狂気の沙汰としか言いようがない。

(ポイント11)

一年間に1mSv(ミリシーベルト)以上浴びては危険だ!という事故前基準が、いきなり年間20mSv(ミリシーベルト)という、とてつもなく高い水準に変えられ、20倍の濃度の放射線量被ばくまで児童生徒に「我慢させる」という暴挙を言い出したのは、一体誰なのか? 文部科学省自身が今まで言ってきた安全基準値の20倍もの濃度基準値へ、いきなり変更したことは異常である。児童生徒の健康安全生命を守るべき文部科学省に、そういう権限が一体あるのか? とんでもない話しである。放射線は多くても、また微量でも、人体に有害・危険である。まして発育期にある児童生徒には、成人より一層被ばくの危険が高いのである。

(ポイント12)

文部科学省が今回定めた3.8μSv/h(マイクロシーベルト/時)=年間20mSv(ミリシーベルト)基準値は「外部被ばく」だけを想定したものである。「内部被ばく」の場合、被害はもっと大きくなる。しかし、文部科学省の今回の数値には、内部被ばくによる放射線量の影響は、全く考慮されていないことも問題である。事実文部科学省も「内部被曝は考慮せず。あるシミュレーションをもとに、内部被曝を考慮しなくてもよいという結論に至った。そのシミュレーションの詳細については承知していない。」と語っている。

(ポイント13)

こんな危険な状況にしたのは一体誰か? 言うまでもなく国(政府)である。自らの責任の所在を一切表明しないまま、子どもたちに放射線被曝を強制するという政府のやり方は、到底容認できない。

(ポイント14)

しかも4月24日現時点でさえ、事故が終息するということは、いまだ全く確信をもって言えない状況にある。それどころか今後もっと多量の放射線が流れ出るヒドイ状況になる可能性は十分ある。今現在福島第1原発事故の炉心内で何が起こっているかは、東京電力職員を始め、世界中で一人もいないのである! 今この瞬間にでも再臨界や水蒸気爆発が起こっても少しもオカシクない緊迫した状況が続いているのだ! 事故は未だ全く収束していないにもかかわらず、ICRPが「事故収束後の基準」とする1~20mSvの範囲を適用し、しかも、その範囲の最高値の20mSv(ミリシーベルト)を取り出し、適用した文部科学省官僚の誰か一人でも、原子炉の炉心内部を覗いた結果決定したのだろうか? 今後、福島県内を始め、日本全体がどこまで放射線汚染が拡大深刻化するか、科学的根拠をもって証明した文部科学省官僚が一人でもいるのか?

(ポイント15)

4月21日の安全基準値撤回を求める諸団体と文部科学省・原子力安全委員会との交渉の場では、文部科学省は『事故は完全に終息している段階ではないが、ICRPの「事故収束後の基準」(1~20ミリシーベルト)の基準値を学校現場に適用し、20ミリシーベルト以下の地域に関しては安全であると今回決定した』と語った。1~20mSv(ミリシーベルト)の範囲の被曝であれば、子どもたちに「被曝の危険がある」ことを文部科学省が認めた(決めた、強要した)ことになる!文部科学省が極めて無責任な決定し下したことがこれで明らかになった。児童生徒の健康や生命を確保することより、数字のつじつま合わせゲームに熱中する文部科学省に、日本の将来を担う児童生徒や科学者を育生、指導する能力も権限も全く無い。

(ポイント16)

安全対策は「現在想定される状況より、より悪い状況を想定し、より安全より確かな安全圏や安全値を、まず先に設定しておき、終息へと進み始めた時点で100%安全と確認できた範囲や部分から漸次解除していく」のが基本である。安全対策というものはそういうものだ! しかし、文部科学省や政府のやりかたは、明らかにこの基本とは「真逆」のし方である! 福島第1原発の事態は、終息に向かうどころか、現状把握すらできていない「手探り状況」の真っ直中にある。それにもかかわらず、より危険度の高い基準値へシフトさせたことで、児童生徒を死地へと追い込む暴挙である! 既に福島県下の各学校では、文部科学省の通達をうけた教育委員会からの指示で、子供を校庭で遊ばせている。しかも、福島市内を含む福島県全域での放射線累積総量は、日一日を経る毎に着実に増大しつつあるというのに! 我が国の教育史上、自らの犯罪行為を後世まで印す愚行を文部科学省は犯してしまったことを、ここに明記しておく!

(ポイント17)

「計画的避難区域」に適用されている20mSv/y(ミリシーベルト/年)の基準値を「計画的避難区域」外の福島県下全体の児童生徒に適用した・・・ということは、「計画的避難区域」に適用されている基準値そのものが、オカシイということになる! 「計画的避難区域」の20キロ圏、30キロ圏の設定範囲や、その圏内での放射線量の安全基準値そのものの信憑性までも、今回の文部科学省の省令で極めて疑わしいものであることがバレてしまった!

【20mSv/y決定に至るまでの経過】詳細はなお不透明な点が多いが、概略は以下の通り
  1. 最初に福島県が独自で県下の学校の汚染状況を調べた
  2. その後で福島県から文部科学省へ[1]の調査結果を添付して知らせ対策の打診をした
  3. 福島県からの打診を受けた文部科学省も文部科学省独自の追加調査を行った
  4. [1]及び[3]の調査結果を踏まえ、更に4月19日14時頃に原子力安全委員会に対し文科省から「20mSv(ミリシーベルト)でいいか?」と問い合わせをした
  5. 文部科学省からの[4]の問い合わせに対し同日16時頃に原子力安全委員会から文部科学省に対し「よい」との助言をした。ただし原子力安全委員会内部では、19日14時~16時この間には、原子力安全委員会としての公式会議は全く開催しなかった。原子力安全委員会内でどのような協議をしたか、持ち回り会議であったのか否か、その時の議事録が有るか否かも不明。最終的には原子力安全委員会としては「20mSv(ミリシーベルト)以下ならさしつかえない」との結論を出したのは確か。
  6. 原子力安全委員会からの「よい」の助言回答を踏まえ、文部科学省が問題の20mSv(ミリシーベルト)暫定基準値の適用を決定した。つまり、文部科学省は判断基準をすべて原子力安全委員会に丸投げした形になっている!ただし、この件に対し原子力安全委員会は、「アドバイスはしたが、学校現場を預かる文部科学省が最終決定し判断を下した」と団体交渉で答弁した。最終責任の関係機関どうしでの醜い「押し付け合い」をさらけ出した。
【文部科学省及び原子力安全委員会との交渉で解ったこと】
  1. 「野外の50cmの高さでも問題ない。大人も子どもも同じ基準値で問題ない」と文部科学省も原子力安全委員会も判断したことは確か。
  2. 文部科学省側は今回の基準値が「放射線管理区域」の基準を上回る値であるという認識も持ってなく、交渉に出てきた文部科学省の担当者は「放射線管理区域」の意味さえそもそも全く知らなかった。また文部科学省内でどような審議が如何なる経過で行われたかも全く知らなかった。
  3. 文部科学省も「学校等にそれぞれ1台程度ポケット線量計を配布し、生徒の行動を代表するような教職員に着用させ、被ばく状況を確認する」「学校等における継続的なモニタリング等の結果について、二週間に一回以上の頻度を目安として、原子力安全委員会に報告すること」
  4. 原子力安全委員会からの助言に基づき、文部科学省もそれに従っている。こちらの「文部科学省ホームページ」参照
【今後私たちに求められるていること】
  1. 20mSv/y(ミリシーベルト/年)の値決定までい至る審議経過をすべて明らかにする。
  2. 20mSv/y(ミリシーベルト/年)の値の科学的根拠を明らかにする。
  3. 今回の20ミリシーベルト決定は「空間線量」だけで「内部被曝」の危険は無いものとして考慮しなかったと文部科学省は回答したが、シュミレーションを行った結果の判断だとすれば、そのシュミレーションをいつ、誰が、どのような方法で行ったシュミレーションなのかの回答を求める。
  4. 文部科学省の判断の根拠となったとされるシミュレーションとは何かを明らかにする。
  5. 大人と子どもに同一の値を適用し、子供であることを考慮しなかった理由を明らかにすること。細川厚生大臣も「大人と子どもの違いは当然配慮せねばならない」と答弁している。
  6. 福島県や原子力安全委員会や文部科学省の土壌調査方法は信用できない。文部科学省が今後行う測定は、福島県の市民と相談しながら行う。
  7. 20mSv/y(ミリシーベルト/年)の暫定基準値を早急に撤回する。
  8. これらすべてについて文書での回答を求める。

以上が、福島の市民団体から文部科学省及び原子力安全委員会へ抗議と申し込んだ内容です。ぜひ、みなさまも抗議しましょう!

抗議先:
文科省スポーツ・青少年局学校健康教育課03-5253-4111
首相官邸:https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html
文部科学省:https://www.inquiry.mext.go.jp/inquiry09/

※参考
【フクロウの会ブログ】原発震災復興・福島会議の進言書に、福島のお母さんたちの悲痛な声が多くよせられています。
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/svh-652a.html

【緊急セミナー報告】原発震災から子供たちを守れ
http://www.foejapan.org/infomation/news/evt_110413.html

諸留能興20110415過去の主な原発事故

1970年12月04日~1996年02月23日までの、26年間に、実に156件も事故が発生していた!年平均6回(2ケ月に1回)のペースで発生し続けている。原発会社のみならず、原子力安全委員会や原子力安全・保安院ぐるみの事故隠しが横行してきた。こうした過去の経過をふり返ってみた時、政府や電力会社の発表や説明に、一体、どれほど信憑性があるのだろうか?

○1973年03月(日付不明)
美浜一号炉で第三領域の核燃料棒が折損する事故が発生。関西電力はこの事故を公表せず秘匿し、秘密裏に核燃料集合体を交換しただけで処理した。衆議院科学技術振興対策特別委員会等が追求した結果、原子力委員会は事故発生後4年近く経った1976年12月7日に事故を認めた。
○1974年09月01日
日本初の原子力船「むつ」が、青森県尻屋岬東方800kmの試験海域での出力実験で、原子炉の出力を約1.4%まで上げた時、高速中性子が遮蔽体の間隙を伝わって漏れ出る「ストリーミング」現象により、放射線漏れとなり、警報ブザーが鳴る事故を起こし、地元住民が「むつ」の大湊定係港(母港)帰港に反対。平成4年9月以降から解体撤去が始まる。
○1978年11月02日
東京電力福島第一原子力発電所3号機で起こった、日本初の臨界事故。7時間半臨界が続く。この事故情報は発電所内で共有されず、同発電所でもその後繰り返され、他の原発でも繰り返された。この時の事故の情報が全国の発電所でも共有されておれば、1999年の北陸電力石川県羽咋市志賀原発事故も防げた筈東京電力は「当時は報告義務がなかった」と開き直る。
○1989年01月01日
東京電力福島第二原子力発電所3号機事故。原子炉再循環ポンプ内部が壊れ、炉心に多量の金属粉が流出。レベル2の事故。
○1990年09月09日
東京電力福島第一原子力発電所3号機事故。主蒸気隔離弁を止めるピンが壊れた結果、原子炉圧力が上昇して「中性子束高」の信号により自動停止。レベル2の事故。
○1991年02月09日
関西電力美浜発電所2号機事故。蒸気発生器の伝熱管の1本が破断。日本の原子力発電所で初めて常用炉心冷却装置(ECCS)が作動した事故。事故原因は、伝熱管の振動を抑制する金具が設計通りでなく、異常な振動発生で、金属疲労で破断に至ったもの。微量放射線物質が外部に漏洩。美浜沖海水から、トリチウムが470Bq/L~490Bq/Lが検出。
○1991年04月04日
中部電力浜岡原子力発電所3号機事故。誤信号により原子炉給水量が減少し、原子炉が自動停止。レベル2の事故。
○1991年05月31日
中部電力浜岡3号機の制御棒が同様に3本抜けた事故。中部電力は1992年にマニュアルを改訂。「国への報告はしなかったが他電力へ報告した」と主張。事故発生から29年後の2007年3月22日に、事故隠しが発覚し公表された。
○1995年12月08日
動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉もんじゅナトリウム漏洩事故。2次主冷却系の温度計の鞘が折れ、ナトリウムが漏洩し燃焼。レベル1の事故。この事故で、もんじゅは2010年04月まで停止。
○1997年03月11日
動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設アスファルト固化施設火災爆発事故。低レベル放射性物質をアスファルト固化する施設で火災発生、爆発。レベル3の事故。
○1998年02月22日
福島第一原子力発電所第4号機の定期検査中、137本の制御棒のうち34本が50分間、全体の25分の1(1ノッチ約15cm)抜落ちる事故が発生。
○1999年06月18日
北陸電力羽咋市志賀原子力発電所1号機の定期点検中に、の弁操作の誤りで炉内の圧力が上昇し3本の制御棒が抜け、無制御臨界が15分間続く。所内幹部会議で隠蔽が決定され、運転日誌への記載も、本社への報告も無し。総点検の聞き取りに対し事故報告せず。2006年11月の保安院指示による社内総点検中で報告が出た後の2007年3月に公表。日本で2番目の臨界事故。
○1999年09月30日
東海村JCOの核燃料加工施設内で核燃料を加工中に、ウラン溶液が臨界状態に達し核分裂連鎖反応が発生、この状態が約20時間持続した。至近距離で中性子線を浴びた作業員3名中、2名が死亡。日本で3番目のレベル4の事故。周辺住民に外出しないようにと呼びかけ、事故現場から半径350m以内の住民約40世帯への避難要請、500m以内の住民への避難勧告、10km以内の住民10万世帯への屋内退避および換気装置停止を呼びかける。管理規定に沿った正規マニュアルでなく「裏マニュアル」を運用し、その裏マニュアルも更に改悪して作業が行われていた。
○2004年08月09日
関西電力美浜発電所3号機の2次冷却系のタービン発電機付近の復水配管(第4低圧給水加熱器~脱気器間)が破損し、高温高圧の水蒸気が多量に噴出。点検の準備の為、211名が作業をしており、問題の配管室内にいた11名の作業員のうち逃げ遅れた作業員5名が熱傷で死亡。6人が重軽傷を負った。レベル0+の事故。事故直後に死亡した4名の死因は全身やけど(熱傷)および、ショックによる心肺停止で、ほぼ即死に近い状態だった。事故から17日目の8月25日には全身やけどを負った作業員が死亡し、この事故での死者は5人となった。肉厚4.7mmまで減肉する前に予防措置を取る内部規則無視の結果だった。原子力施設での労働災害として極めて重大事故で、国内の原発事故史上初の「重大災害対策本部」が設置された。
○2007年07月16日
新潟県中越沖地震に伴う東京電力柏崎刈羽原子力発電所での一連の事故。同日発生した新潟県中越沖地震により、外部電源用の油冷式変圧器が火災を起し、微量の放射性物質の漏洩を検出。地震で発生した火災は柏崎刈羽原子力発電所一カ所のみ。震災後の高波で敷地内が冠水。このため使用済み燃料棒プールの冷却水が一部流失。全被害の詳細は2007年10月現在なお調査中。この事故で柏崎刈羽原子力発電所は全面停止。
**参考**(以下の資料には政府や原発会社の弁護と思われる箇所もあります・・!!)
日本の原子力関連事故一覧
東海村JCO臨界事故
原子力事故
美浜原発事故疑惑
原子力船「むつ」

諸留能興20110404今、日本全国の水道水が危い!!

水道水汚染は、決して首都圏だけの地域限定の危機状況ではなく、関西も含む、全国的範囲の深刻な問題であること、今日現在までの政府関係省庁の杜撰な汚染検査方法によって、日本中の水道水が、危機的状態に既になっていることが明らかになりました。以下の内容は、厚生労働省▼[註01]、原子力安全委員会▼[註02]、農林水産省▼[註03]三政府機関に、私(諸留)自身が電話でも確認した内容です。

大気中や地面や海水中に、一体どれだけの量と濃度の放射性物質が、既に放出したのかが、誰一人正確に把握し切れていない現時点では、今すぐに危険なレベルではないとも言えるし、逆に政府や東京電力が公表する放射線量数値は、信用出来ない!のか・・・誰にも、断定できる人は、国内外に一人もいないでしょう!

「不安を煽り、神経質になり過ぎて、風評被害を拡大させるのはつつしみましょう・・・!」などの報道、をNHKは公然と流しています。しかし「風評か?」「正しいまともな判断か?」の決めては、如何なる方法で、どのような放射性分析が行われているのか?抜きにしては「風評」もへったくれもない筈!

科学的な正しい確認を怠り「風評被害」のみ強調することで、実際に行われている狂っているとしか思えないような事態を、意識的、無意識的に犯してしまう者こそ、「風評被害」を流している者と言えよう。

放射性の計測方法の実態を、正しく把握する事も、原子炉の構造や現状把握と並んで、極めて緊急かつ重要な作業だと思います。原発賛成派や反対派も含め、国民全体が科学的、地道な現状把握の努力を怠っているように思われる。

以下の通り、杜撰な検査体制、一部の要素や成分だけを、意図的に選んで分析し、政治的見地から都合の良い検査結果だけを、垂れ流すことが、いよいよはっきりしてきました。今のような放射線検査方法を続けてきた結果、水道の放射線汚染問題は、東北地方や首都圏だけの話しでは、もはや治まらなっています。関西も含め、北海道から沖縄まで、日本列島全体の水道水や飲料水が、原子力発電所周辺や首都圏同様、危険な状態に晒されていることを、以下示します。

文末の関係資料を、皆様一人一人で再確認下さって 容易ならざる深刻な憂うべき状況に突入していることを、 各自で御確認、御判断下さい!

~~「水道水」と「飲料水」の区別は実際には不可能(出来ない)にもかかわらず、強引に両者は別物!と言う厚生労働省!~~

(1)厚生労働省、日本医学放射線学会▼[註04]、日本産科婦人科学会▼[註05]、首都圏周辺各自治体(水道局)▼[註06]、など各種関係機関の「放射能汚染された食品の取り扱いについて」等の文書で示されている、飲料水及び水道水、食品の安全基準の指標値(暫定基準値)は、すべて【厚生労働省の策定ではなく、原子力安全委員会の策定した暫定規準値である!!】。この点をまず、しっかり、御確認下さい!!

(2)「飲料水」と「水道水」は別扱い?? 同じ厚生労働省内でも、「飲料水」は厚生労働省医薬食品局の管轄下に置かれていて、「水道水」は同じ厚生労働省でも、衛生局(水道課)の管轄下であるという、「縦割り行政」となっています!。その為、基準値も、責任の所在も、全く別々である事にも注意下さい。

(3)「水道水」に関しては、今日(平成23年4月3日)現在でも、全国の水道水の安全を監督指導する責任にある厚生労働省衛生局(水道課)であるにも拘わらず、【放射性物質に汚染された水道水に関する基準値などという「モノサシ」は、そもそも初めから存在していなかった!】という、オドロクベキ事実が判明しました!

(4)では、今回の「水道水」や「飲料水」に関する、一連の首都圏周辺各自治体を始め、日本医学放射線学会や日本産科婦人科学会やマスコミが報道▼[註07]したような、「1Kg当たり100ベクレルを超える放射性ヨウ素が検出されれば乳児に飲ませないように云々・・・」の指示は、一体どこから発せられたのか?厚生労働省厚生労働省医薬食品局が出したのか?と思って、厚生労働省厚生労働省医薬食品局へ問合わせたが、そこでもないことが判明した。

厚生労働省厚生労働省医薬食品局が大震災の発生した、約1週間後の、平成23年3月17日付「放射能汚染された食品の取り扱いについて」の公文書▼[註08]には、「水道水」の言葉は全存在せず、「飲料水」の項目のみ記載されていることも判明しました!

(5)しかも、同省医薬食品局職員が私(諸留)に「ここに記載されている飲料水には水道水は該当しません」『飲料水』の範疇には『水道水』は含まれず、コンビニ等、市中店舗で市販されてるペットボトル入りの、牛乳、ジュース、コーヒー、紅茶、緑茶などの、『市販飲料水』・・・それがここに書かれている『飲料水』の意味です!」と、平然と言い切った! 「エッ?それはオカシイくありませんか?あなたのおっしゃるその『飲料水』は、工場製造段階では、水道水を使うのでは?水道水に放射性物質が混入すれば『飲料水』にも、放射性物質が混入することになりませんか?」との、私(諸留)の指摘に、同省職員は黙ってしまいました!

有機的総合的に流動している社会構造を部分的に切り取り、自らの関与する部分だけの整合性や監視さえ実現すれば、社会全体や市民の生命が脅かされても、知らん顔・・・という、お決まりの「縦割り行政」の弊害が、ここでも露呈していた!という「おまけ」まで発見しました!

(6)今回の「水道水騒ぎ」で安全な基準値を、やれ「上回った」、「下回った」と福島県はもとより、首都圏世でも大騒ぎしているのに、厚生労働省衛生局(水道課)でもないし、厚生労働省厚生労働省医薬食品局でもないなら・・・一体誰が、何処で、何時から、どんな汚染基準のモノサシが使われ、如何なる分析方法を駆使して、決定・作成・公文書として発令されたのか??

(7)驚いたことに、その出所は、最終的には、たった一箇所、【原子力安全委員会】であった!水道水の安全性を監督指導する厚生労働省衛生局水道課でもなければ、厚生労働省医薬食品局でもなく、まして日本医学放射線学会や日本産科婦人科学会でもなく、内閣府の審議会等に位置づけられ、我が国原子力行政推進の中核である「原子力安全委員会」が決定・作成した暫定基準値を、厚生労働省、農林水産省、全国自治体水道局等その他機関は、そのまま、右から左へと「横流ししていただけ!」という事実が判明しました。

原子力の安全性を監督監視指導すべき原子力安全委員会が、今回の福島第1原発事故も含め、これまでも全国各地で頻発してきた「原発事故隠し」に荷担してきている原子力安全委員会が、放射線で汚染した水道水や飲料水の安全暫定基準値までも、厚生労働省の頭超しに、一元的に策定し規定してきていた!というのですから、呆れたものですね。以下確認できたように、「ダダ漏れ」している原子炉だけでなく、水道水・飲料水の安全確保面でも「尻り漏れ現象」を起こして、杜撰な水質基準値の「垂れ流し」を行ってきていた!ことも、重大な事態である。

(8)更に驚いたことに、原子力安全委員会が作った「モノサシ」を、ほぼ「丸写しして、厚生労働省「衛生局」水道課名で、自治体に配布された「福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道水の対応について」▼[註09]と題する公文書は、同様に、同省「医薬食品局」安全部長名発令で[平成23年3月17日付]に発令した、「放射能汚染された食品の取り扱いについて」から、検査2項目を勝手にカットした上に、同省医薬食品局安全部の公文書中の「飲料水」の文字はそのまま変更せず、「飲料水」言葉に「水道水」の意味をも勝手に含ませる・・・という強引に解釈を施して発令したことも判明した。

「放射能汚染された水道水に関するこうした文書は、同省発足史上、初の措置です」と、同省職員が私(諸留)にはっきり語った。厚生労働省衛生局では、【水道水が「放射性物質で汚染される」という事態が原発事故が原因で発生することなど、最初から想定すらしていなかった!いや、「そうした事態を想定することすら想定していなかった】ことが判明した!!

現在の我が国の「飲料水」も含め「農産物」や「加工食品」のほとんど全てには「水道水」が使用されています。最終出荷地は表示されても、製造過程や現在用の個々の生産地や製造所までは明記されていません。北海道から沖縄まで、全国各地で製造・流通・販売されてますから、局所的な汚染地だからといっても、決して安心できません。水道水や飲料水での、こうした杜撰な検査の現状では、全国各地に、放射線汚染した水道水や飲料水、食料品類が氾濫するようになっても、決しておかしくない現状だと思われます。

(9)確かに、厚生労働省衛生局食品保健部監視安全課が平成14年5月9日に、全国の都道府県、政令市、特別区各衛生管理課御中宛「事務連絡」の形で「緊急時における食品の放射能測定マニュアルの送付について」▼[註10]が発令された事は、過去にも確かにあった。だが、その時の発令目的は、「原子力テロ対策の一環として」作成公布したのであって、原子力発電所の事故によって水道水が放射性物質で汚染される事を想定した緊急対策マニュアルではありませんでした・・・そんな事態は初めから想定してませんでした・・・」と、同省医薬局職員も、率直に私(諸留)に認めた。事実、その言葉を裏付けるように、同公文書冒頭部にも「原子力テロ対策の一環として交付」と明記されていることからも、それは明らか。

東京電力福島原子力発電所が、テロ対策は抜かりなく早々に過剰警備の強化、テロ対策の口実で原子炉中央制御室の位置も、事故現場に駆けつけた作業員さえも事前に知らせられなかった程の極秘対策は、怠りなく手を打ってきていながら、自然災害対策は、後回しとされてきたのです。こうした東京電力と軌を一にして、厚生労働省も、全く同じ姿勢で対処していたことが、明白になりました。水道・飲料水への危機管理対策すらも、原子力推進最優先に席を譲らされてきていたこと、国家ぐるみの、大政翼賛的、国家総動員的な原子力発電推進!の、強固な国家体制がしっかり出来上がっていることは、ここでも確認できますね!

(10)こんな「ていたらく」ですから、現在同省衛生局が「現在は水道水の放射線量の値が安全暫定基準値以下になったから御安心下さい!」と、いくら報道しても、初めから安全基準値の「モノサシ」それ自体が存在しなかったのだから、現在の水道水が「安全値以下に下回りましたから御安心下さい」といくら言われても、安心できないと思うのが、当たり前ではないのか?最初から安全基準値の「モノサシ」が無いのだから、たとえ如何に、ごく微量な量であるとしても、放射性物質が含まれてること、それ自体が、「極めて異常な事態」ではないのか!

(11)仰天したのは、それだけではなかった。厚生労働省健康局水道課が「飲料水」暫定基準値を発令した日付が、なんと、平成23年3月19日だったことです!!同省医薬食品局安全部長名発令の、例の『飲料水』基安全暫定準「食安発0317第3号」の公文書が発令された平成23年3月17日の「2日後」だったのです!「発令日が医薬食品局のそれと「逆」なのって、オカシイと思わないのですか?水道水を使って、飲料水が工場で製造される以上、水道水の安全基準値の発表を同時に発令するか、あるいは、「水道水」の方をまず先に発令するのが当たり前では?」の私の質問にも、同省職員は、黙ってしまった。

(12)もっと驚いた・・・というより、背筋が寒くなるような、更に別の事実も明らかになりました。原子力委員会作成の『飲食物摂取制限』に関する安全暫定基準値の表の中で、検査チェック項目が、「放射性ヨウ素(混合核種の代表核種:I-131)」「放射性セシウム」「ウラン」「プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種(Pu-238,Pu-239,Pu-240,Am-241,Cm-242,Cm-243,Cm244 放射性濃度の合計)」の、全部で僅か4項目となっているのに、同省健康局水道課[平成23年3月19日付発令]では、「放射性ヨウ素」と「放射性セシウム」の【2項目】だけに更に削られていたのですね!「何故ウランとプルトニウムの2項目は水道水検査対象核種から除外したのですか?この基準値を作成したの原子力委員会策定の『原子力施設等の防災対策について』でも、僅か4項目しか検査対象項目となってるのでも不安なのに、ウランとプルトニウムまで、更にチェック対象から、同省健康局が除外した理由を説明して下さい!」の私(諸留)の質問にも、一切答えず、またまた黙ってしまいました!

今迄も述べたように『飲料水』の範疇には、『水道水』は含まれず、検査対象核種も「ヨウ素」と「セシウム」2種類の元素だけないのですから、現在の放射線チェックシステムでは、もし近未来に「ウランかプルトニウム」が混入した場合の『水道水』でも、「シロ=正常値です」の検査結果になる!!という、オドロクベキ実態が明らかになりました!

(13)しかも、チェック対象になっている「放射性質ヨウ素」300Bq(ベクレル)/Kgと、「放射性セシウム」200Bq(ベクレル)/Kgの基準値を安全基準値であるとした理由として、【上記の(例2)で算出した約0.007mSvの人体への影響は、東京からニューヨークに航空機で移動した場合の放射線の人体への影響(約0.6mSv)の約14分の1。胃のエックス線集団検診(1回)を受診した場合の放射線の人体への影響(約0.6mSv)の約86分の1である。】 といった、相も変わらず、素人を欺く、非科学的で悪質極まりない理由まで、御丁寧に付加している有様である。

たとえ安全基準値以内(限界線量以下)であっても、体外被曝や体内摂取時間が長期間になる程、積算被曝量は大きくなります。更に、体外被曝や体内摂する人の人数が大量になる程、致死的ガンになる人の数も多くなります。微量放射線が人体に与える影響の有る無し・・・を巡って、疫学的、放射線医学的にも決着がまだついていないのが現象ですから、「疑わしきはより広範囲に!より慎重に!」と、極力、被曝量を少なくする方が私たち市民にとって良いことは言うまでもなかろう。

以上からも、水道水の安全性は、「たとえ今すぐ影響が出るレベルではない」としても、」全く信頼に値しない「意図的に流す偽情報」「情報操作」である。

(14)『飲料水』や『水道水』の放射線汚染を防ぐ安全基準が、これほどのお粗末杜撰である以上、そうした危険な『飲料水』を製造段階で使用製造された『飲料水』が全国的広範囲に市販される以上、水道水の放射能汚染は、福島県下や首都圏に限られた状況ではないことも、今や明らかとなった。原子炉からの放射性物質の粉末粉塵は直接飛来しなくとも、汚染された飲料水や水道水を経由して、北海道から沖縄に至るまで、日本列島に暮らす日本人全体が、飲食物摂取(経口摂取)の形で、体内被曝の危険に晒される危険が、否定できない極めて由々しい状況となったことは、これで理解できるだろう。

(15)厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課作(平成14年3月)作成の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」等の、一連の関係法令の暫定基準値は、全て、「原子力委員会」の「原子力施設等の防災対策について(案)」▼[註11]が、【下敷き】となっている。我が国の飲料水・水道水・その他お食物の放射線被曝判定に関する、国内唯一の、この【下敷き】(モノサシ)で示されている「検査内容」を調べてみた結果、ここでもまた、オドロクベキ事実が判明した。

以下からは、原子力安全委員会策定の放射線汚染食品の安全基準マニュアルの問題点を列挙する。

(問題点A)

原子力安全委員会の基準の根拠は「ICRP」(国際放射線防護委員会)の Publication 6を踏まえている▼[註12]。そもそもこの「ICRP」の基本姿勢が、人体の健康最優先ではなく、【統計学的に「有意」とはならない危険債は、原子力推進上やむをえない】とする立場の国際基準値であること。我が国の原子力安全委員会も、こうした「ICRP」の政治的立場を踏襲する原子力利用最優先、国民の健康被害は二の次のとする立場に立つ安全委員会である点がまず、問題とされねばならない点。

(問題点B)

「放射性ヨウ素」「放射性セシウム」「ウラン元素」「プルトニウム」「ウラン元素のアルファ核種」の4核種(元素)のみが、検査対象核種となっていて、その他の核種は分析対象から除外されている点。原子炉から排出する核種にはヨウ素より、更に高濃度の放射線を放つ放射性物質も含まれている▼[註13]にも拘わらず、それらの核種は、検査対象外とされている点。

(問題点C)

「放射性ヨウ素」に関して、「飲料水、牛乳・乳製品及び野菜(根菜、芋類を除く)」の3つの食品だけを指標に策定し、この3つの食品以外の穀類、肉類等が検査対象から除外されている点▼[註14]。第39回原子力発電所等周辺防災対策専門部会の除外理由は「食品中への備蓄や人体への移行の過程が小さいから」とされている。微量放射線量の人体への影響は疫学的、放射線医学的にも決着がまだついてない領域であるにもかかわらず。

(問題点D)

ウラン元素とプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ種各種に関する項目でも、ウランとプルトニウム及び超ウラン元素の双方とも、実効線量を5mS/y(ミリシーベルト/年)と同じ基準値としている点。ウラン235の半減期は約7.0億年、ウラン238の半減期は約45億年と天文学的に長い。それに対し、プルトニウムのそれは、最も短いPu-241の14年~最大のPu-242の370000年と、ウランに比べ極めて短期間である。半減期が短くなるほど放射線量は強烈になる為、ウランよりプルトニウムの方が、はるかに強い放射性毒性を帯びている。更に、プルトニウムは透過能力の弱いアルファ線を放射するが、体内被曝すれば、数十μm(マイクロメートル)という白血球の直径程度の微少量である程、細胞組織との距離も接近するので、被曝量は距離の二乗に逆比例して著しく増大しる。その為、局所的に莫大な数の電離や励起を起し、人体へ及ぼす生物学的影響は極めて大きい▼[註15]。こうした点を考慮すれば、両者の、実効線量を5mS/y(ミリシーベルト/年)と同一基準値とすることは問題である。

(問題点E)

放射性物質の検出方法にも、多くの疑問点がある。食品中の放射能の各種分析法には、[1] NaI(Tl)シンチレーションサーベイメータによる放射性ヨウ素の測定法、以外にも[2]ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリーによる核種分析法がある。

このうち、[1]のNaI(Tl)シンチレーションサーベイメータを用いた測定では、核種弁別が出来ないことから【放射性核種を全てI-131 として扱う】こととされており、その検査結果は、ヨウ素131以外の、Cs-137 などの、原子炉内で生成される他の放射性核種も混在することになり、その為、【ヨウ素131の実際の数値が過大評価となることに留意すべし】と書かれている点である。

更に、同文書6頁の(3)「測定操作」項目でも述べられている様に、採取した測定資料の微粒粒子の大きさ(サイズ)によっては、この[1]の検査方法では検出され微粒子の場合も、十分有り得る。その為に、[2]のゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリーによる核種分析法を更に行う場合もあり得ることも注記されている。

同上文書P14 「6 検出感度」でも分析資料が少ない場合は、試料不均一性によるデーターのばらつきが生じる恐れがある・・・」と示されていることからも解るように、放射線量計測が、一定の誤差や限界を伴う微妙な微量分析であることから、検査結果が必ずしも正確な数値を示すものではないことを指摘しておく。

(問題点F)

核種の違いやそのサイズの違いに応じて、検査方法も数種類あるが、それぞれの検査方法[検査方法A][検査方法B][検査方法C][検査方法D]・・・があるとき、それらA、B、C、D・・・の個々の検査方法の説明は、一定度示されてはいるものの、それらA、B、C、D・・・の検査のうち、どの検査方法が、もっとも精度の良い方法であるかの優劣を判定し得るような「比較説明」は、全く示されていない点も、問題である。

(問題点G)

同書P12の表1:緊急時(多核種検出時)においてマリネリ容器(2L)を用いた時の測定時間と定量可能能レベルの関係・・・からも解るように、「緊急時検査」と「平時の検査」に大別されており、今回のような原発事故といった「緊急性を要する状況下の検査方法のほうが、簡易性、迅速性が優先されるため、検査精度が後回しになり勝ちです・・・」と、原子力委員会及び厚生労働省職員も、率直に認めた。同上文書P17「4 放射性ストロンチウム分析法」(2)に「放射性核種の濃度を正確に求めるための分析法として、平常時のモニタリングに用いられている発煙硝酸法云々・・」とある。

---------▼[註]▼--------- ▼[註01]厚生労働省厚生労働省健康局水道課 技術係:http://www.mhlw.go.jp/
〒100-8916東京都千代田区霞が関1丁目2番2号
[電]03-5253-1111(内線4030)[FAX]03-3503-7963

水道水担当:同省衛生局水道課 [電]03-3595-2368
「水道関係」URLは:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000177kr.html

▼[註02]原子力安全委員会:http://www.nsc.go.jp/shinsajokyo/index.htm
連絡先:内閣府管理環境課[電]03-3581-9919

▼[註03]農林水産省:http://www.maff.go.jp/
農林水産省には放射線汚染した「飲料水」や「水道水」の安全基準を扱う部局も安全基準値も存在しない。

▼[註04]日本医学放射線学会:http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=912

▼[註05]日本産科婦人科学会:http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i8

▼[註06]東京都水道局HP:http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/

▼[註07]
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110322/fks11032221090024-n1.htm
http://mainichi.jp/select/science/news/20110323k0000m040114000c.html

▼[註08]
厚生労働省医薬食品局安全部長名発令「放射能汚染された食品の取り扱いについて」
「食安発0317第3号」[平成23年3月17日付]の都道府県知事・保健所設置市長・特別区長各位宛の、A4(2頁)公文書。
第2頁目の別添○飲食物摂取制限に関する指標の一覧表の各項目

▼[註09]
厚生労働省衛生局水道課 各都道府県水道行政担当部(局)殿宛
「健水発0319第1号」「福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道水の対応について」

▼[註10]
厚生労働省衛生局食品保健部監視安全課[平成14年5月9日]「緊急時における食品の放射能測定マニュアルの送付について」

▼[註11]
「原子力施設等の防災対策について」昭和55年6月(平成元年3月一部改訂 ~ 平成22年8月一部改訂分まで)
原子力安全委員会「14 飲食物摂取制限に関する指標について」P108以下の(付属資料14)
第39回原子力発電所等周辺防災対策専門部会(平成12年4月14日)資料39-3

▼[註12]国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告
(Pub.103)の国内制度等への取入れに係る審議状況について-中間報告-
[平成22年1月]放射線審議会 基本部会

▼[註13]
原発炉心の放射能に関する米国物理学会報告書[WASH-1400:略称]1975年政府報告書
“Reactor Safety Study”Appendix VI の表3-1
TABLE VI 3-1 INITIAL AVCTIVITY OF RADIONUCLIDES IN THE NUCLEAR REACTOR CORE AT THE TIME OF THE HYPOTHETICAL ACCIDNT
の一覧表には54種類もの放射性物質の核種が示されている。:http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/staff/sr75-014/appendix-vi/
原子炉内の放射性核種--その2[仕事とその周辺]:http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/

▼[註14]「第39回原子力発電所等周辺防災対策専門部会(平成12年4月)」
資料39-3(付属資料14)p.138以下「飲食物摂取制限に関する指標について」

▼[註15]放射線科学センター Radiation Science Center「人体に対する放射線の影響」
http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-01.pdf

誰かが「原発問題は煮詰めれば文明とは何か?に行き着く」とかいうようなことを言っていたと記憶してるけど・・・確かにそうだなぁと思う。技術的知識的豊かさに裏打ちされた文化を選ぶのか?・・・いのちと大自然の豊かに支えられた文明を選ぶのか?・・・


諸留能興20110402放射線量「単位」の正確な理解を!

政府、東京電力、原子力安全委員会、マスコミ御用学者のインチキ報道、欺瞞解説には、ただただ呆れるばかり・・・呆れるのを通り越して背筋が寒くなってます・・・我が国が既に「制度疲労」を起こして、正常な情報が国民大衆に伝わらなくなり、私たち市民もそれに気付きにくい状況が、いよいよ明白になってきました・・

「水道水の汚染地に関する国家組織上げての一大ペテン報道」の確実な証拠を昨日、東京の厚生労働省霞ヶ関本庁職員自身から電話で私(諸留)自身で、確認して明白となりましたが、それに関しては、次回に回します。今回は、放射線量の「単位」の意味を正しく理解しマスコミ報道に騙されないようにしましょう! 11:35 2011/04/06

放射線量を示す「単位」には、過去に使われていたが、現在は滅多に使われない単位も含め何種類かの単位があります。今回の福島原発事故後、TVや新聞で、盛んに使われているBq(ベクレル)とSv(シーベルト)の2つの単位の意味、両者の違いが、キチンと正しく理解されていない為に、マスコミの欺瞞報道を見抜けない状況が頻発していることを大変危惧しています。

桁数を示す単位の「ミリ(m)」が基準値の1/1,000(千分の一)、ミクロン(μ)は、1/1000,000(千分の一の更に千分の一=百万分の一でナノ(n)は、1/1000,000,000(千分の一の千分の一の千分の一のその又千分の一=十億分の一)ですよね。従って、1シーベルト(Sv)=1000ミリ・シーベルト(mSv)=1000,000マイクロ・シーベルト(μSv) =1000,000,000ナノ・シーベルト(nSv)なのは、よくご承知ですよね。

(1)「カウント・パー・ミニッツ(cpm)」

放射線量を示す単位として(cpm)という単位があります。このcpmは「カウント・パー・ミニッツ(cpm)」のことです。「1分(毎分)あたりに計測された放射線の数」を示す単位です。

【留意点その1】

ここで注意して欲しい第1のポイントはこのカウント・パー・ミニッツ(cpm)や、以下で述べるBq(ベクレル)の単位は、放射線の種類や強さを示す単位ではないという点です。cpmやBq(ベクレル)の単位で示された数値は、ただちに、その数値が放射線が人体に及ぼす強さを示す数値とはならず、単純には健康への影響の目安にはならない!といういう点を、まず、しっかり確認して下さい。以下、それをBq(ベクレル)に即して、説明します。

(2)Bq(ベクレル)

この単位は、「放射能量」と訳されていますが、ある放射性物質が放射線を出す能力の強さ、を示す値の単位です。ある種の原子核(例えばウラン原子)があるとして、その原子核が崩壊して放射線を発する時、1秒に何個(何回)の放射線を発するか・・・という、その回数を示す数値を意味します。

有る物質の放射線量が 10Bq だとするなら、「その物質は1秒毎に10個の割で原子核が崩壊して放射線を出している」という意味です。但し、ここで注意しておかねばならない第二の点は、

【留意点その2】

その物質から放射されている放射線の「種類や強さは反映されていない」という点を、しっかり頭に入れておかねばなりません。放射線を放出している元素がヨウ素であるか、又はコバルトなどか・・・その元素の種類(放射性物質の種類)が違えば、いづれもBq(ベクレル)という同じ単位で示される同じ数値であっても、(キログラム毎や、リットル毎の)安全許容値は、それぞれ異なってきます。解りやすい例えで言うと、ピンポン玉を1分間に50発(回)ぶち当てられてもほとんど怪我はしないけど、鉄球を剛速球で1分間に5発(回)ぶつけられたら致命傷ですよね。この例の、ピンポン球や鉄球のように、人体に向かってぶち当てられる球の種類のことを「核種(かくしゅ)」(原子核の種類の意)といいます。

Bq(ベクレル)や、cpm(カウント・パー・ミニッツ)は、毎秒か、毎時か、毎日か、毎年かの違いはあっても、人体に対してぶち当たってくる球(放射線)の個数を示す数値なのですね。それは、球の速度(勢い)を示す数値ではないことを、しっかり頭に入れておいて下さい。確かに、人体にぶつかってくる球が全く種類の球、たとえば鉄球(核種)であれば、単位時間(たとえば毎秒)当たりにぶつけられる鉄球の数が多い程、怪我の度合い(被曝の程度)も大きくなります。

原子炉から飛び出してくる原子核の破片(核種)は、実は、多種多様な数の核種なのですね。100Bq(ベクレル)/s(毎秒)の割のピンポン球がぶつけられる場合よりも、5Bq(ベクレル)/s(毎秒)の割の鉄球がぶつけられた場合のほうが、大きな怪我になるのと同じです。従って、「今日の××地点でのモニタリングポストでの放射線量は10mBq(ミリベクレル)程度で、これは安全基準値以下ですから心配ありません・・・」といった報道は、極めて乱暴な報道なのですね。毎秒なのか、毎分なのか、毎時なのか、毎月なのか、毎年なのか・・・を、その都度キチンと言い添えていないことが、まず第1の「トリック」! 更に、一体何の核種なのか? 核種の正体をはっきり言わないことが、第2の「トリック」!

政府、東京電力、内閣府の審議会に属する原子力安全委員会、NHKを始め民法TVや新聞各社などなど・・・が発表する、「本日○○時の××所でのヨウ素131の放射線量は 1200mBq(ミリベクレル)でした・・・」と報道されるような時は、ヨウ素も含めヨウ素以外の他の全ての核種も一括して含ませたBq(ベクレル)値(人体にぶつかってくる1秒毎の放射線の個数(衝突回数)を示しているのです。人体にぶつかってくるヨウ素原子か放出された放射線の個数は、当局が発表しているBq(ベクレル)数値(個数)よりは、少ない個数(回数)なのですね。

なんだ、少ない回数なら、それだけぶつけられる回数が少ないんだから、別にそれで良いんじゃないか!!・・・って、思う人が多いでしょうけど、そこが、政府や原子力安全委員会のアブナイ「ミソ」。前述の、原子炉からはヨウ素以外にも多数の核種(スピードの違う球)も飛び出してきますから、ヨウ素という球のぶち当たる回数が少ないからといっても、決して安心できないのですよね。

たとえばストロンチウム90(Sr90)という原子(核種)も、原子炉内のウランの核分裂生成物として発生します。このストロンチウム90(Sr90)という核種は、原子炉内で人工的に作られる元素であって、天然中には決して存在しない元素(より正確にはストロンチウムの放射性同位体)なのですが、このストロンチウム90(Sr90)の原子核は、半減期が28.8年で、さらに原子核分裂を起こして、ベータ崩壊を起こし、さらに、イットリウム90という別の同位体元素へと変わります。(このβ崩壊も、「俗に言う」放射能の一つで、このβ崩壊時に熱を発生します。この熱が、今騒がれている原子炉停止後の核燃料の灰の熱源の一つなのです[▼註1])。

【留意点その3】

このストロンチウム90(Sr90)は、原子炉で生じる量的にはセシウム137と比べ少いですが、体内に入ると電子配置・半径が似ているため、骨の中のカルシウムと置き換わって体内に蓄積し、長期間に亘って放射線を出し続けるため、大変危険です。つまり、ストロンチウム90という種類の鉄球が剛速球で飛び出してきても、それは、政府やマスコミが公表しているヨウ素131の数値には示されていない(隠されている)のですね!

[▼註1]マスコミやニュース解説者など御用エセ学者連中は、原子炉は今は完全もう止まったから、あとは冷やせばいいから・・・」と言い立ててますが、これも不完全な、非科学的素人を欺く言い方! 現在でもまだ「止まってはいない!」のです。

原子炉の炉心内の核燃料物質であるウラン(やプルトニウム)の「原子核分裂連鎖反応が臨界量以下の低い(少ない)レベルまで下った」という意味で「止まった」のであって、原子核分裂自体は、臨界量以下になった今現在の状態でも、また行われているのですね。

中性子発生装置などといった難しい機械なんかつかわなくても、私たちの身の回りには、ごく普通に中性子は飛び交っているのですから、ウランやプルトニウム原子核が存在する限り、自然界でもウランやプルトニウムの原子核分裂は(勿論原子炉正常運転時よりははるかに少ない割合ですけど)、起こっているのですね。

一度分裂したウランやプルトニウム原子核のそれぞれの大小様々なサイズの核の破片(・・・これを「核種」ということは既に説明しました)も、それぞれまた、原子核分裂を繰り返していきます。原子核分裂は、世間の人が言うように「原子炉が停止した」後でも、原子核分裂は、まだまだ続いているというのが、より正確な、科学的説明なんですよね。「原子炉が停止した」という言い方は、極めて不正確な言い方なんですね。原子核分裂反応は原子炉停止後も依然続いているのであって、最終的には個々の核種が鉛(Pb)になるまで、原子核分裂は続いていくのですね。

いくら大量に海水を何十トン、何百トンもぶっかけようとも、発熱が止まらない理由も、臨界レベル以下に原子核分裂反応の回数を減少させたとしても、原子核分裂、それ自体が続いているのですから・・・だから、あれほど水かけても高温を発し続けてるのですね。

正常運転後でも、使用済み核燃料棒が摂氏40度以下の安定状態に達するまでには、最低でも3、4年~5、6年ほど要するんですよね・・・。これは原子炉工学初歩のどの本にも書いてある極めて基本的な事柄なのですから! 使用済み核燃料とは、そういう「シロモノ」なんですよね。

政府や原発や原子力安全委員会や保安局は「原子炉が冷えるまでにはまだ数週間は要するようです・・・」なんて、あいまいな表現で、素人を騙してダラダラ「時間稼ぎ」しているけど、数週間後になったら「まだ一~二年は要しますが・・・」・・その一~二年後には「まだ数年かかります・・・」っていう具合になるでしょうね・・例え、炉心部の爆発や、今生じてる亀裂の更なる拡大の事態は、なんとか、回避できたとしても・・・

【留意点その4】

原子炉は停止しても核分裂連鎖反応は決してまだ停止していません!原子炉が「停止した」かのように報道されてますが、原子核分裂反応が臨界量以下に少なくなっただけで、「使用済み燃料」となった後でも、原子核分裂は、何十年、何億年も続くのです!!原子炉とはそういうシロモノなのです!素人騙しの「止める・冷やす・閉じ込める、の3つのうち、「止める」は成功したから一安心です・・・」の説明は、事実を正確に表現していません。

(3)グレイ(Gy):「吸収線量」

グレイ(Gy)という単位は、被曝したとき、物質や人体に吸収された放射線のエネルギーの量を示す数値です。一度(短期間)に大量被曝したことによる健康被害の指標に用いられる数値です。

さっきの例でいえば、ピンポン球や鉄球が人体にぶつかった時、球をぶつけられた人が体に受けるエナルギーの大きさ、衝撃の強さ、を示す数値です。ピンポン球を3回ぶつけられた時の衝撃よりも、同じく3回球をぶつけられた時に、その人が受ける衝撃のほうが、遙かに大きいことからも、すぐ解るように、同じ3mBq(ミリベクレル)であっても、人体が被る被曝の度合いは、ぶつけられる球の種類が違えば、当然違ってきますよね。Bq(ベクレル)=ぶつけられる球の回数(放射線の個数)だけでは、人体への影響度は、正確には測定できないからこそ、Bq(ベクレル)以外の別の単位、人体へ及ぼす影響の大小を(ぶつけられる回数に関係なく)示す数値を示す単位も、別に必要になるってわけですよね。これがグレイ(Gy)という単位の意味で、「吸収線量」ということです。

少し難しく言うと、このグレイ(Gy)「吸収線量」とは、ある任意の物質中の単位質量当りに放射線が付与したエネルギーの平均値のことです。このグレイ(Gy)の国際単位系はJ/kg(1キログラム当たり何ジュールという熱量になるか)という意味です。ちなみに、単純な放射線の強さを示す物理単位は、エレクトロンボルト(eV)[▼註2]が用いられます。

[▼註2]陽子や電子などの素粒子を光速度に近い猛烈なスピードに巨大電磁石で加速して原子核にぶつけるシンクロサイクロトロンや、ベバトロン等といった、粒子加速器の中を超高速で走る素粒子のエネルギーも、このエレクトロンボルト(eV)の単位が使われます。

【留意点その5】

従って、このグレイ(Gy)という単位で示される吸収線量の数値は、既に説明したカウント・パー・ミニッツ(cpm)やBq(ベクレル)といった「照射線量」とは違って、α線か、β線か、γ線か・・・といったような放射線の種類の違いには全く関係無しに、また放射線を放っている物質の種類(ヨウ素やセシウムといった核種の違い)にも全く関係なく、人体が被る単位重量当たりのエネルギーの量を示す数値なんですね。

逆に、例えばβ線という同じ種類の放射線を被曝しても、そのβ線(という同じ鉄の球)を照射される(ぶつけられる)相手が、人間か、牛か、水か・・・が違うと、受け取るエネルギーの量(吸収線量=グレイ(Gy))の数値は違ってきます。このため、このグレイ(Gy)(吸収線量)を示す場合には、空気吸収線量、組織吸収線量というように、物質の種類を明示することが必要になります。

(4)シーベルト(Sv):放射線量

このように、グレイ(Gy)(吸収線量)を正確に示す場合は、放射線を浴びるものが同じ人体であっても、その人が被曝する「空気吸収線量」とか、「組織吸収線量」というように、放射線を被曝する物質(鉄の球をぶつけられるもの)の種類を示すことが必要となりますよね。

「1グレイという吸収線量を持つγ線が、人体に与える生物学的影響」を「1」という数値として、放射線量で示したもの。これを1Sv(シーベルト)と決めます。簡単に言えば、人体に及ぼす健康被害の観点から考え出された放射線量を示す「ものさし」。これが、シーベルト(Sv)という単位で示される【確率想定値】なんですよね。

【留意点その6】

「一万人の人が放射線1mmシーベルト(Sv)を一年間被曝し続けた場合将来的に致死的癌で死亡する[と思われる]リスク(危険)度が、ある一定の数値の%ですよ!」という、確率想定値、これが○○シーベルト(Sv)という単位を伴って示される数値なのですね。

こうした「確率的想定値」を云々する際に、見落としてはならない大切な点は、その数値を算出する大前提として、広範囲かつ大量な放射線医学的な疫学調査が行える「母集団」が存在すること・・・が不可欠の大前提になります。統計学的に「有意」であるか、「有意」でないかは、大量観察を長期間に渡って行わななければ、統計的に「有意」な数値は得られない、ことは、統計学のイロハですよね。

外部被曝は勿論、体内被曝の場合でも、微量放射線量被曝が人体に与える影響度はどうであるか・・?を巡っては、大別していまだに3つの見方が、並立しているのが実情で、決着をつけるのは、圧倒的に臨床事例が少なくて、今だその結論が出ていないのが、実情なのですね。

仮に、「50mSvが基準値だ」といわれる場合に、その50ミリという数値の意味を読むとき、その数値は、その放射線が人体に及ぼす遺伝子を破壊し傷つける一定量の有害なエネルギー量を意味すると同時に、そうした放射線を、ある一定の人数の集団が、ある一定期間被曝し続けた場合、将来的に致死的癌で死亡すると思われる危険度が、コレコレの%で生じる可能性が高いですよ」という意味を持った数値であることを、しっかり頭に入れておきたいものです。ちなみに「原発から○○キロ地点で××シーベルト(Sv)の放射線が測定されました!」という場合の放射線測定値は、γ線の計測に基づく場合が多い点も心得ておくべき点です。

シーベルト(Sv)は、グレイ(Gy)の単位の数値に「放射線荷重係数」という一定の数値(定数)を「かけ算」することで算出(変換)されます。この「放射線荷重係数」という定数は、X線、γ線、α線、β線、中性子線といった、放射線の種類毎に、それぞれ決めらてた定数があります。X線とγ線の放射線の場合の「放射線荷重係数」は「1」と定められていますから、シーベルト(Sv)=グレイ(Gy)となりますよね。α線の場合の「放射線荷重係数」は20と決められているので、1シーベルト(Sv)=20グレイ(Gy)となります。 中性子線の場合は、少し複雑で、中性子線の持つエネルギー量の大小に応じて、その「放射線荷重係数」は、それぞれ5、10、20と定められています。

【留意点その7】

ここで注意すべき点はα線と中性子線の「放射線荷重係数」値がその他と比べ、「20」という極めて高い(大きな数値)だという点です。TVなどでよく「プルトニウムは確かにα線は放出しますが、しかしこのα線は、紙一枚でストップ出来る程度ですから・・・」といった説明をして、いかにも弱い放射線量の放射線であるかのような、大嘘報道を堂々と垂れ流してますけど、とんでもないペテン報道です!

「放射線荷重係数」値高い(大きい)ということは、ほんの僅かな放射性物質であっても、極めて大きな放射線量[シーベルト(Sv)]の値を持つ、放射性物質だ!ということになりますよね。放射線学や核物理学の基本も知る機会の乏しい国民大衆を欺く、悪質な手口の、これも、その一例ですね。

以上、政府や東京電力や原理力保安局や専門家と称するエセ学者に騙され、彼等のアタマの中の「モノサシ」に引きずり込まれない様に留意すべき幾つかの要点を、まとめてみました。シーベルト(Sv)や、グレイ(Gy)の単位を、その時々に応じて、巧妙に使い分けて、放射線被曝量を、少しでも少ないかのように擬装発表することが頻繁で、マスコミも、それをキチンと確認せず、右から左へ無自覚に「横流し」してることがとても多いです。十分気をつけましょう。

(科学的・論理的誤りや、批判、御意見、転送大歓迎)


諸留能興20110331ICRP基準値の根源を問う!

今問題になってるプルトニウム(Pu)の放射性毒性の危険性を示すBq(ベクレル)や、Sv(シーベルト)という放射線被曝限界の基準値は、一体、誰が、いつから、どういう方法を用いて、国際的に決められてきたのか・・・このことを、一体何人の日本人が、いや全世界の人の何人が、正確に知っているのだろうか?

政府や原発会社は勿論、それを指導監督すべき立場にある官僚も、NHKを筆頭とするTVや新聞のマスコミも、御用学者連中も、口を揃えて「××場所で計測れた○○Sv(シーベルト)の放射線量はただちに健康を害するような量ではありません・・・」などと報道される時の「○○Sv(シーベルト)」という数値は、一体、何を「モノサシ」(判断の基準、尺度)としているのか、その尺度の決め手となったデータは、どんな被曝事実や実験結果から、得られたデータなのでしょうか?これらの事を、まず正確に知っておくべきではないでしょうか。

そのモノサシとなっているのは、いうまでもなく、「国際放射線防護委員会」(International Commission on Radiological Protection: 略称ICRP)の基準値です。

このICRPは、専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織であり、主委員会と四つの専門委員会(放射線影響、誘導限度、医療放射線防護、委員会勧告の適用)からなっています。その勧告は国際的に権威あるものと見なされ、国際原子力機関(IAEA)の安全基準や世界各国の放射線障害防止に関する法令の基礎とされ、我が国の放射線防護や関連法令の基準値も、このICRPの勧告が基本となっている。

6大陸約30カ国から200以上のボランティア・メンバーと独立した国際的組織です・・・のような説明は、インターネット上でもゴロゴロしてるますよね。これくらいの事は、チョット調べれば、誰でも確かめることができます。

スウェーデンのストックホルムに事務局を置く、この ICRP なる組織(団体)の実態は、では一体、どのような団体(国際学術組織)なのか? このICRPは、冷厳なる国際社会の国家間の争いから、果たして「厳正中立」なのか?超大国の「国家エゴ」から完全に独立した「人類平等愛の精神に富んだ」信頼し得る国際学術組織なのだろうか?

ICRPが初めて「耐容線量」の値を発表したという1934年には、何かあった年だったのか? ナチス党による「水晶の夜」の、ユダヤ人大迫害と虐殺の起こった3年後であった。ナチスドイツがや米国が核兵器実現へ向けて研究開発に着手する時期の前夜に、ICRPが「耐容線量」の値を発表したのは、果たして偶然だろうか?

ICRPが「最大許容線量」の値を勧告した1950年には、朝鮮戦争が始まり、D・マッカーサーが朝鮮半島への原爆投下をトルーマン米国大統領へ要請し却下された年ではなかったのか?

ICRPが「実効線量当量限度」を打ち出した1977年をを挟む2~3年の時期は、日中平和友好条約の調印、ソ連のアフガニスタン軍事侵攻が始まる等、東西冷戦対立が大きく変化し始めた年ではなかったのか?

ICRPが放射線被ばくに伴うリスクの最新データを取り入れた「実効線量限度」と放射線防護に関する基本的な考え方を勧告した1990年には何が起こったのか? その頃は東西冷戦終結の象徴的出来事、東西ドイツの統一があり、湾岸戦争勃発前夜ではなかったか?

ICRPの勧告が公表され、放射線防護の正当化、最適化及び線量限度の原則が維持されているほか、新たな知見に基づく被ばく状況の再整理などの変更が行われた2007年には何が・・?

「ICRPの勧告が国際原子力機関(IAEA)の安全基準の基礎にされている」ことからも、このICRPもIAEA と同様、政治的にも、勿論道義的にも、「厳正中立で、信頼に値する国際組織」ではないことが、容易に解るであろう。

核兵器の拡散には【タテマエ上は】警戒の目を光らせながら、国連安保理常任理事国を構成する超五大国の核武装は、一切不問に付すだけでなく、今や核武装が公然の秘密化してるイスラエルを放置し続け、北朝鮮やイラク、イランの核開発だけに疑惑の目を注ぎ続けてきているIAEA、五大超大国以外の原子力の軍事利用には警戒しながら、原子力発電等、その平和利用は積極的に推進してきているような・・・そんな IAEA が信頼を置いているICRPが、どこまで、「厳正中立でかつ信頼に値する国際組織」と言い切れるのだろうか?

ICRPの発足以来の歴史とその経過を、時系列的にその時々の国際的緊張状況を背景に重ね合わせて、詳しく眺め直してみる者には、ICRP が、決してそんな「ナマヤサシイ」機関でないことが解る。

ICRPの年報である「Annals of the ICRP」「ICRP Publication 105」「医療における放射線防護」の条項を熟読なさった方ならご承知でしょうけど、「本人の自発的意志に基づく場合」という付帯条件付きであっても、放射線医学研究目的での人体実験を積極的に認めていますよね。このことからも、放射線の利用、より拡大させて、原子力の平和的利用には、反対の姿勢とっていどころか、むしろ積極的に推進させようとの意図が、明瞭に伺えます。

原子力の平和的利用に賛成だからこそ、それを押し進める際にどうしても避けられない人体への放射線傷害という「やっかいもの」が、人体へ悪影響を及ぼさない、ギリギリの放射線量の【確率想定値】を、決定せねばならない必要が、生じたのである。

放射線も含め、原子核分裂や、α線や、β線、γ線(X線はγ線の一種)、中性子線、重粒子線などの放射線現象に、一切手を出さなければ、放射線被曝の最低基準値を設定するということも、全く不要な筈である。

ICRPが、原子核物理学現象の軍事的使用は《絶対悪》である、との立場をあくまで貫く団体であるのか?否か?純粋放射線医学の団体に自己限定し、政治的領域には「口出ししない」ICRPの立場は、「核分裂現象及び放射線現象といった原子核物理学現象の平和的利用も、核兵器同様《絶対悪》である」とする立場を鮮明にする団体ではなく、IAEA と同様に、原子核物理学現象の平和的利用は積極的に賛成、推進させる側の団体であることは明らかである。

ICRPが、原子核物理学現象の平和的利用を利用に、賛成し、推進させる立場にある国際団体であるからこそ、核物理学的現象の利用に際し不可避的に発生する、人体(人類)に及ぼす「悪しき影響」を、最小限に押さえ込む必要を感じるのであろう。ICRPが、もし、核物理学現象の利用一切を必要とせず、認めない立場にある国際的組織であるなら、「安全基準値」という「モノサシ」それ自体を設定する必要なんか、そもそも生じない筈だから・・・。

原子炉という経済的生産現場であれ、放射線治療の医学現場であれ、万引きやハイジャック犯防止の為にホームセンンターや、空港などに設置されているX線身体探査機の設置現場であれ、そこで発生するα線や、β線、γ線、原子核分裂・・・等の核物理学諸現象を、日々の生活に利用する必要があればこそ、それら有害作用が我々人体の周辺組織へ将来及ぼすであろう疾病発生の【確率想定値】を設定する必要が生じるのである。

それら核物理学諸現象を、人為的に操作することも、変更を加えることも、利用することも、一切を拒否するならば、ICRPなるものも不要だし、やれBq(ベクレル)だ、やれSv(シーベルト)だ・・・などといった【確率想定値】も、そもそも設定する必要も一切無い筈。

「原発は不要だが、医学的利用応用は良い」として個別に取捨選択する問題として処理するのが正しいのか? 「全てを利用することを認めた上で、あとは程度問題だ・・・」とするのが正しいのか? 「一切の応用も、着手も拒む」のが良いのか?

私たち人類にとって、素粒子理論物理学といった純粋学問研究も含め、核物理学諸現象の研究や応用に、人類が「手を出した」ことが、果たして本当の幸福に繋がるのか?、否か?が、根源的に問われていることは確かである。

かつて、湯川秀樹博士が「核兵器は《絶対悪》である」と表明されて、核廃絶を世界に訴えた時、そんな湯川秀樹博士に対し、評論家唐木順三氏は「あなた(湯川秀樹博士のこと)は、核兵器は《絶対悪》である・・・と、確かに訴えられたが、しかし、物理学も《絶対悪》である、とまでは言わなかった。核兵器には反対しても、純粋学問としての素粒子理論物理学研究をすることは、あなたにとっては楽しかったのだ。核兵器同様、物理学も《絶対悪》であると言わなかったのは間違っている!」と、唐木順三氏[▼註1]は激しく湯川博士を批判した。

[▼註1]唐木順三は、西田幾多郎を中心とする京都楽派哲学を専攻した。仏教哲学に造詣も深い。代表作に『無常ということ』がある。

原子力エネルギーとそれに付随する諸現象に手をかけ、それを研究する楽しさ、その現象の応用から得られる便利さや快適さ故に、自然界には全く存在しない「禁断の物質」に、手をかけた、まさにその瞬間から、人類には「地獄の釜の口」が開かれたのである。  原子力発電が無事故で正常運転を未来永劫続け得たとしても、原子核を人工的に破壊(核変換)を行ったその瞬間から、人類に「地獄の釜の口」は確実に開かれたのである。

何千年、何億年という、途方もない半減期を持ち、天文学的に気の遠くなるような、未来永劫に、子々孫々にいたるまで、悪魔の物質を残すこととなったのですね。いくら水をかけても、どんなに頑丈で分厚いコンクリートや鋼鉄で囲ったり、遮蔽してみても、何億年にもわたって放射線を放出し続ける「悪魔の物質」を、地球上に出現させたのは、私たち人間なのですね。

そんな愚かで、恐ろしい人間の一人として、快適な生活をしたいという欲望に引きずられて「地獄の釜の口」を開くことになった原子力エネルギーから生まれた電気の恩恵に、浸る生活を《絶対悪》と思わなかった私自身を、心から恥ずかしいと思う。若い頃に、湯川博士を尊敬し、彼と同様に、素粒子核物理学という純粋学問を楽しんできていた自分も《絶対悪》を犯した一人だと、今になって、つくづく思う。

原発事故が起こらず、それが安全運転してた時でも、その危険性を十分知りながら、そこから生み出される電気の恩恵に日々浴しながら、それと引き替えに、私の故郷に近い、みちのくの、あの美しく、荒涼とした、かってはアイヌ先住民族の暮らしてきていた「下北の大地」に、膨大な量の放射性物質の貯蔵を許してしまった自分を、唐木順三氏同様、《絶対悪》を犯した愚かな自分だと、つくづく痛感しています・・・

プルトニウムを巡る、以下のような、凄まじい悲劇が、実際に生じていたことを知ろうともとせず、原発の恩恵に浴している人が、いまのこの瞬間も、全世界に大勢いることを、私は本当に恐ろしいことだと思う・・・・

「がん患者へのプルトニウム注射、治療費の払えない患者への大量の放射線照射、放射能人体実験という、米国の核兵器開発過程での暗黒の出来事が最近明るみに出され、米国国民を大きく動揺させている。」(▼2) ▼2『朝日新聞』[1994/02/01]

「女性記者のアイリーン・ウエルサムさんは、原爆開発のマンハッタン計画の一環として、原爆の原料となるプルトニウムの毒性や体への吸収率を調べるための人体実験が、1945年~1947年に行われていたことを1987年に知った。被験者は18人。記録にはコード番号しか記されていなかったが、6年がかりで5人を突き止めた。(米国ニューメキシコ州のアルバカーキー・トリビューン紙』[1993/11])また、1950年代初め、軽い知的障害があった児童に、マサチューセッツ工科大の研究者が放射性物質入りの食べ物を「ビタミン入りの栄養食」などと言って食べさせた実験も暴露された。」(▼3)。 ▼3『朝日新聞』[1994/02/01]

「米国テネシー州のバンタダービルト大学病院でも、同大学と米国原子力委員会(エネルギー省の前身)が、栄養剤の名目で妊婦に液状の放射性鉄59物質を飲ませ、放射性物質の胎児に与える影響を、1945年~49年にかけて、調べていたことが明るみに出た。」(▼4) ▼4『朝日新聞』[1994/02/02]

同様のことは我が国でもある。「燃やした燃料以上の燃料を再生産できる」、「夢の高速増殖炉」を歌い文句としてきた政府のプルトニウム推進政策には、原子力工学を始めとする核物理学の技術や知識に乏しい国民を欺こうとする疑問点、問題点が見出されてる。海外からも指摘された「動燃」制作のプルトニウム・ビデオに登場する「プルト君」が、プルトニウムの安全をPRさせようという意図から、わざわざプルトニウムを飲んで見せるという画像を、小中学生向けに作成した。軽犯罪法違反だとして、市民グループから告発状が寄せられ(▼5)、国内外から厳しい非難が寄せられた。 ▼5『朝日新聞』[1994/05/27]および『朝日新聞』[1994/05/20]

「耳かき1杯分で数千人の致死量」と言われるプルトニウムをわざわざ飲んでみせる宣伝ビデオを、科学的知識の乏しい就学児童向けに普及宣伝させる動力炉・核燃料開発事業団(当時)は、悪びれるどころか、「お茶の間に話題を提供しただけのこと・・・」と開き直っている。この暴挙に対して、日本政府と原発推進政策上でも緊密連携プレーを保っている米エネルギー省のヘーゼル・オリアリー長官ですら「誤解を招く」との抗議を寄た(▼6)。 ▼6『朝日新聞』[1994/02/22]および『朝日新聞』[1994/02/28]

1994年4月に臨界に達した夢の高速増殖炉(これは勿論推進派の謳い文句)「もんじゅ」開発過程でも説得のある説明は、政府や推進派側からはなされなかった。チェルノブイリ原発事故が起こった時、原発推進者たちは「日本の原発はチェルノブイリ原発と逆の性質(泡が増えると核分裂しにくくなる)ので、チェルノブイリ原発のような事故は起こらない」と説明した。しかし、この説明は軽水炉の場合の説明であり、「もんじゅ」が炉心の内側で同じ性質(高速増殖炉の「正のボイド反応度」)を持つことは故意に隠蔽した・・・。

軍事技術開発には、軍事機密は常につきもので、秘密のベールに包まれない軍事技術開発など存在しない。同様に、原子核エネルギーの平和利用開発にも、機密は常につきもので、秘密のベールに包まれないその平和利用開発も存在しないことは、上で紹介したような、出来事からも伺える。

「きわめて重要なことがある。原子力の平和利用を進めていくと核オプションを持てるようになることだ。原子力に二つの種類があるわけではない・・・。原子核エネルギーの平和利用と、その軍事利用とは、一枚のコインの裏と表の関係である。一方(裏)が存在せず、他方(表)だけが存在することはあり得ないことである」

~イスラエルの元原子力委員会委員長で、イスラエルの核兵器開発の功績により《イスラエルのオッペンハイマー》と呼ばれたベルクマンの言葉より~


諸留能興20110330僕と素粒子原子物理学

僕は今64才ですけど 僕が小学生の頃は、高度経済成長前だったから 電化製品なんて、我が家には 裸電球が2~3個と、ラジオ1台・・・それしかなかったんですね! あとは、何~んにもなかったっけ・・・ 洗濯機も、炊飯器も、クーラーも、扇風機も、テレビも無かった・・・ アイロンだって母は、炭火を入れて使ってたっけ・・・ あぁ・・・そうそう、渦巻き状の 「ニクロム線電気コンロ」が1台あったけど、 それも電気代が高いから・・・って 一年に数回しか、使わなかったデス。

当時の日本人はそれでも、生活はできてました・・・ 中学校の頃から、高度経済成長が始まって、 伊勢湾台風が吹き荒れた頃から 九州や北海道の石炭炭坑労働者たちの大量解雇が始まり 九州の三井・三池炭坑でも、北海道夕張炭坑でも 閉山間際の粉塵大爆発事故が相次いで 大勢の炭坑労働者が連日のように何百人も 死亡したり、助かった人も一酸化炭素中毒で その後長く苦しんでましたよね・・・ その少し前頃から水俣病も 広がり始めた頃でした・・・

炭坑閉山が相次いだ頃から、大勢の炭鉱労働者が 大阪の西成区(釜ケ崎)や、東京の山谷に 移住していきましたよね。 今の釜ケ崎の野宿者で高齢者は、たいていが 元炭坑出身者といわれるのも頷けます・・・

SL(蒸気機関車)が姿を消し、 ディーセルカーに代わりだしたころから 原子力発電・・・という言葉が ボツボツ聴かれるようになってきて・・・・ 昭和35年中頃から 家電製品花盛りの時代へと突入していきました・・・・

秋田高校時代の3年間は、ずーっと物理クラブで バンデグラフという、1万ボルト程の高電圧発生装置とか 手製の原子炉の模型(勿論ダンボルーやベニヤ板とかの)を 作ったり、 ドライアイスをせっせと買い集めては 放射線(放射能の一種)を測定する「霧箱」も作ったりしてました。

僕が秋田から京都へ出てきたのは 湯川秀樹先生に憧れてでした。 原子核物理学、素粒子理論を勉強したくって 京都大学理学部で実験物理学を専攻していた 同じ母校の秋田高校の8才ほど年上の先輩を頼って、 京都大学を受験したけど・・・

数学の点数が悪かったので 現役受験で落第して、その後も、 京都市内に下宿し予備校に通いながら 再度受験したけど、 やっぱり京都大学理学部は無理と解って どっちも同じ合格範囲だった 湯川秀樹先生の弟子で小林先生という方が 当時、神戸大学で宇宙線の研究なさってましたので 神戸大学理学部の物理学科を受験するか それとも、方向転換して、京都で農業経済学を勉強するかで、 大分迷ったけど、

最終的には、物理学はとうとう諦めて、 農業経済学を勉強することに決めて・・・ そんなわけで、農業経済学思想史講座に進んだのですが、 元々、中学生の頃から、ずーっと、今でも 物理学が好きだったものですから、その後も ずーっと40年以上も、 湯川秀樹先生の書かれた本で 原子物理学や核物理学方面の本も読んだりしてました。 もちろん、難しい数学を使った専門書は読んでも 全く解らなかったけど、数学を使わないその方面の本は、 必ず目を通すようにしてきてました。

湯川先生の後を継いで、 同じく日本学術審議会会長を務められ、 「超多時間繰り込み理論」っていう、素人には 何が何やら、チンプンカンプンの素粒子理論研究で ノーベル賞を受賞された朝永振一郎先生の本も 数学を使ってる本は全く読めなかったけど 数学を使わずにお書きになられた本は その後も、必ず目を通してきてました。

これは予断になりますけど、 僕が高校2年生の時に 化学の授業で「イオン化傾向」っていうのを 丸暗記させられたんですが カリウム(K)>カルシウム(Ca)>ナトリウム(Na)>マグネシウム(Mg)>アルミニウム(Al)>亜鉛(Zn)・・・っていう順番に イオン価が次第に弱くなっていくのを 頭から「丸暗記」させられたんだけど・・・ それを知ってないと、化学方程式が解けない・・・って脅されたので、 「門前の小僧習わぬ経を読む式」に意味も解らず 強引に丸暗記させる化学の先生に疑問感じちゃって・・・ 「なんでこんな順番に並ぶのですか?」 って放課後、質問に行ったら 「オマエなぁ・・・受験控えた大事な今、そんなこと考えてたら大学受験失敗するゾォ・・・!黙って頭からオボエときゃいいんだ!!」 って、怒鳴られちゃって・・・それで 「かかあなあまぐあるあえんてにするな・・・」 って「呪文」を暗記したんだけど・・・

でも、その後も、何故かなぁ・・・って、時々思い出してました。 社会に出て、朝永振一郎先生の 「超多時間繰り込み理論」のノーベル賞論文の 概略を読んだ時、高校生の時の あのイオン化傾向の強弱が何故あの順番に並ぶのかは、実は 彼の超多時間繰り込み理論と密接に関係してたってことを知って・・・ 「あぁ、そうだったのか・・・やっぱりなぁ・・・」 って、しみじみ思ったこともありましたヨ・・・

ご存知かどうか解りませんけど 相対性理論のアインシュタイン博士と並んで 世界の物理学の双璧といわれた 量子力学(原子核より更に小さい微粒子の研究)研究で 今でも世界的に最も偉大といわている ドイツ人理論物理学者のハイゼンベルグ教授が 湯川秀樹先生の司会で、京都大学で講演会をなさった時も 超満員の法経大教室の人垣に押しつぶされそうな 恐怖を感じながら、聞きに行ったりして・・・

あの時聞いた(勿論、湯川秀樹先生の日本語通約でしたけど) ハイゼンベルグ教授の講演・・・ てっきり、物理学の量子力学の難しい話しだろうなぁ・・・って 思って聞きに行ったのですが・・・ 意外にも、古代ギリシャの哲学者プラントの「イデア論」 を長々と話され、それが素粒子物理学を考える上でも 大切なことを訴えておられたことが 大変印象的でした・・・

そんなことで、その方面の先輩や友人からも 多様々な情報をその後も貰ったり、 原子力や原子爆弾、原子力発電所などの動きも、 じーっと、その後も、注目してきてました。

今回の東京電力福島第1原子力発電所での事故は 素人の人が思っているような、 軽い事故では決してありません。 海水を注入したから一安心とか 電源が繋がったから、これでヤレヤレ・・・ といったことで治まるようなものではないことは 僕みたいに、少しでも原始核物理学や原子力のことを、 かじった人なら、誰でも、すぐ予測できることなんデスね・・・

「現実に、あと数日後には、必ずこうなります・・・」って断定して言うのでなくって 「コレコレの条件Aが揃えば、その次ぎにはコレコレBの事態が起こって、 そのBの事態が更に進めば、その後には、コレコレCの事態になりますヨ・・・ そいう事態になってもおかしくないですヨ・・・」 っていうような、「理論的な推論の筋道」くらいは 話そうとすれば、すぐ簡単に出来るのに・・・ でも、それさえ、TVに登場する東京大学大学院原子炉工学の教授でさえ TVも新聞も一切報道しようともしない・・・・ 彼等は何が何でも、「最初に原発推進有り」の前提の人たち ばかりですから・・・

それに下手に理論的予測した後で、結果的に、そうならなかっ時に 「な~んだ!あいつが言ってた通りにならなかったじゃないか・・・」 「風評撒き散らす無責任なケシカラン学者だなぁ・・・」 って言われるのも警戒して、知ってても 保身上から口を閉ざしてるのでしょうけどねぇ・・・

事態は、ジリジリと容易ならない方向へ進んでますよね。 爆発事故が起こって、海水注入が始まった直後に 現在の状況になることを、僕は覚悟しました・・・

炉心の爆発は押さえられても、大量の炉心内の 高温高圧水蒸気が大気中に、水素爆発以前でも既に 外気へ通じる弁(ドライ・ベント弁っていうんだけど)を開いて 大気中への大量放出が始まった時から、広範囲に 高濃度放射線汚染が始まったのは、すぐ解りましたから・・・

今回の事故が起こる前の今迄でも、 報道はされなかったけど(報道された時でも大事故ってことは隠されて報道されたけど) 一歩間違えば、大事故になる原発重大事故も 何回も起こってたのも知ってたし・・・ それを電力会社も、原発会社も、政府も、大学の学者も 皆で隠しに、隠し続けてきてましたから・・・

一番危なかったのは、確か7年前っだたかな? 若狭湾で起こった美浜原子炉事故でしたが・・・それさえ マスコミぐるみで、ひた隠しに隠し続けてきてましたから・・・

あの時、たまたま偶然に、ラッキーなことに 原子炉の暴発を押さえられたので、 世間は何事もなかったみたいに 記憶にさえ残ってないけど・・・ もし、暴発してたら、若狭湾だけでなく 京都も、和歌山も、近畿地方は潮岬の沖合まで スッポリ、汚染するとこでしたけど・・・

繁栄と豊かさのラクチン生活の味を一度でも覚えた私たちは 大阪の釜ケ崎労働者が、建設現場の日当の2倍以上の 高額日当につられて、「若狭原発銀座」に どんどん送り込まれ、どんどん被曝して、 どんなに原発で苦しもうとも、僕たちは知らん顔して あるいは、知ってても、黙って口を閉ざして・・・ 原子力にささえられた快適な電化生活の中で 日本も、文化的な豊かな生活になったなぁ・・・って 疑うことすら、しなくなったんですよね・・・・

パレスチナ難民支援してる諸留さんが なんで原発なんかに首突っ込むの?・・・って 思う方も多いのですが・・・ イスラエルの核開発→イラク原子炉攻撃→劣化ウラン弾(DU)・・・ の一連の追跡してこられてる フォトジャナリスト広河隆一さんとの出会いも 大きく影響してるんですけど・・・

原子爆弾は一気に燃やした(爆発させた)後は ほったらかしだから・・・簡単だけど 原子力発電は、正常運転してても、 ゆっくり静かに、ソロソロと原爆を爆発させることだから・・・ 運転は凄く難しい(微妙)なんですね・・・ 一旦緊急停止した後から、現場では「地獄」がはじまるんですよね・・・

青森県六ヶ所村の核燃料保管庫に 全国54ヶ所(51ヶ所だったかな?)から集めた 膨大な量の使用済み核燃料(プルトニウムも含む)の冷却装置が、 今回の地震で、もし破壊されてたら日本列島どころか 北半球が深刻な汚染になっちゃったかも・・・ そうならなかっただけでも、 神様に感謝せねば・・・と思ってます・・・