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【第32夜】

切支丹波天連渡来之図
制作1914年(大正3年)/絹本・着色・軸装/寸法112.0×39.1cm
 竹久夢二(1884?1934)は、大正ロマンの旗手として、美人画、デザイン、文学など多彩な分野で活躍をしたが、彼は若い頃は、幸徳秋水など社会主義者とも親交があったが、幸徳秋水の大逆事件以後は、生涯女性の姿を描き続けた。江戸時代の浮世絵の女はにこりともしないが、黒い大きな瞳の女性は、時として優しいほほえみを浮かべているのも、大正ロマン時代の象徴などだろうか。ところで、夢二とアラブとは関係があるだろうか。
すでに、このアラブ千一夜の第21夜ーーエジプト・アラブをテーマにした西洋音楽でも紹介したが「舞姫タイス」である。
 夢二の最優秀作品のこの《切支丹波天連渡来之図》《室之津懐古》は、アナトール・フランス(フランス生まれ、晩年1892年にノーベル文学賞受賞)の代表作『舞姫タイス』(1890年出版)にヒントを受けたと言われている。
 ジェスイット派風牧師は、大正期に流行した黒ビロード地の服に赤いシャツを着ている。黒靴にはダンディなスパッツも掛けている。夢二もこの通りの服を着ていたという。この牧師は夢二の自画像でもある。女性は丸山の遊女。絞りの襟の襦袢に、赤地の小唄を染め抜いた長襦袢のまま座っており、牧師の黒い服を引き立て、色鮮やかに浮かび上がる。
 牧師は長いロザリオを掛け、遊女は手に聖書を開いている。二人はそれぞれ反対方向を見つめて、互いの心(世界)の行き違いを表現しているようである。
 人間の長い歴史には、「信仰と肉慾」との「葛藤と苦悩」が続いている。『舞姫タイス』の内容は、4世紀当時、世界一の港エジプト・アレキサンドリアで一番の美しい舞姫で、高級遊女でもあったタイスが、修道院長パフニュス僧から入信をすすめられた。タイスは過去の罪悪に苦しみ、懺悔した末に入信、後にアレキサンドリアのマグダラのマリアと崇められるようになったが、僧パフニュスは美しいタイスの肉体への妄想に悩むと言う、フランスの哲学を下敷きにした物語である。
 マフネー作曲でオペラ(1894年、パリオペラ座初演)にもなり、二幕の一場と二場との中間の間奏曲「タイス瞑想曲(ヴァイオリン独奏、ハープ伴奏)の名曲が知られている。また、『舞姫タイス』は映画にもなっており、夢二はこの話をよく知っていた。
 夢二が好んで描いたオランダ僧と遊女のシリーズは、男女の組合せの新鮮さが現代にも生きており、人の心を強くとらえるのである。
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版権元:KKグラナダ
※無断転載を禁じます
なお、夢二の美しい絵葉書や印刷画は、日本有数の民芸品の老舗、株式会社『グラナダ』で求めることができる。
この会社の創業者、河村幸次郎社長(1901~1994)はこの「グラナダ」を1964年に作り、スペイン・イタリア・中南米から直輸入した陶器を主に、食器・鉢カバー・家具・ランプなどのインテリア用品を販売している。
河村氏は竹久夢二の絵の日本における最大のコレクターでその夢二展は毎年全国で提示され、どの会場の盛況の満員という。河村氏自身が夢二と親交があった。
株式会社『グラナダ』 FAX 03-3723-1204

   定休日:土曜日/日曜日/祝日
〒152-0031 東京都目黒区中根2-15-20(都立大学徒歩5分)
WELCOME International Craft Center GRANADA Co.,Ltd.

 


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