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【第2夜】

4000年の歴史が諸君を見下ろしている!

●人類全体に覚醒を促しているピラミッド

『兵よ、4000年の歴史が諸君を見下ろしている!』  1798年エジプトに侵攻したナポレオンが、カイロ郊外のギザでのマムルー ク軍との決戦の日に、ピラミッドを指差して檄を飛ばした有名な言葉である。   

『世界遺産』の3分の1に当たるとさえ言われている巨大なエジプトの遺跡 群・ギザのピラミッド、王家の谷の壮麗な神殿、アブシンベルのラムセス2世 の巨像などは、今なお世界の観光客の魂を揺すぶり続けている。私もルクソー ルのカルナック神殿の大円柱群の下に立ったとき、2回とも膝が諤々と震えて きたのを思い出す。文献の中で、古代のエジプト人は神に捧げる建造物をつくる以上、その建築 の尺度は神の尺度で建設されねばならないとされた読み、納得がいったのであった。
 
また、4000年前に25トンの石を230万個構築して作られたピラミッドが堂々と残っているのも『世界の7大不思議』そのものであるが、王や貴族の墓の 内部に残る壁画の色鮮やかさにも驚嘆する。ピラミッドの底辺が正確に東西南北を指していること、アブシンベル神殿の ラムセス二世の座像の背後にある大きな広間には、春分と秋分の日の朝の2回 のみ、入り口から太陽光線が奥の方まで照らし出すように設計されていることなどから古代エジプト人が当時すでに建築に微分積分を十分に駆使する高度の文明を持っていたという事実にただただ脱帽する外はない。建築の壮大さばかりでなく、ツータンカメン王の黄金のマスクを始めとして 古代エジプトの壁画、彫刻などの美術的水準の高さも感嘆に値する。

1986年初頭、グラハム・ハンコックの『神々の指紋』(翔泳社)が学問的には、多くの疑問符をつけられながらも、大ヒットして、古代エジプトへの関心 を一層燃え上がらせ、同年の姉妹編『創世の守護神』(R・ボ-ヴァルと共著) とともに、日本でも300万のベストセラーになる程、エジプトブームを現出させた。  それは、おそらく21世紀を目前に控えながら、未来の明るい展望をもち得 ないわれわれ現代人が今一度、古代文明の中に人類の原点を探ろうとする不安 ・焦燥感の現れであろうか。

1965年の『ツタンカーメン秘宝展』に先立つ1963年の朝日新聞主催『エジプト美術5000年展』で、この壮麗な古代エジプトの彫刻を見た詩人、小説家 の佐藤春夫は、「人類は今まで何をやっていたのだ」と感想を書いていたことを 思い出す。

まさに、ピラミッドは、現地のエジプト人や毎日訪れてくる世界の観光客ばかりでなく、4000年の歴史をもって人類全体を見下ろしているのである。今、これらのピラミッドたちが、「人類よ、眠りから覚めよ」と檄を飛ばしているような気がしてならない。(つづく)


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