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【第7夜】

アラブ児童文化の向上に協力しよう

 爆発的な人口増加を続けている多くのアラブ諸国の人口の半分は15才以下という。この若い世代に教育を与え国づくりに必要な人材として養成することが、どのア ラブの国の指導者にも緊急の課題となっている。  

しかし、アラブ諸国の児童文化となると、まだエジプト、レバノン、イラク、チュ ニジアなどで、絵本、児童向け雑誌、童謡などが少しづつ発展し始めているというの が実情らしい。サウディアラビアなどのイスラームの教えを重視する国家から出版さ れた預言者の伝記などの幼児向けの絵本を見かけたことがある。  1999年9月には、サウディアラビアのモハンマド バシ-ル クルディー駐日 大使の草案、コミック作家の鈴木マリ氏の絵で、サウディアラビアの建国の父アブド ルアジーズ王の物語を日本の若い人びとに向けたコミック『アラブのサムライ』が発 行され、つい最近ではインターネットでも見られるようになった。

アドレスはhttp:/ /www.saudi-arabia.or.jp/comic1/。(ここに、『アラブのサムライ』の写 真が一枚)  

  われわれ日本人がもっと自信を持つべきものとして、日本のアニメ映画がある。 『シンドバッドの冒険』はアラブの子供たちや教育界から絶賛を博し、『ジャングル 帝』、『ドラエモン』などがアラビア語に吹き換えられて、アラブの少年少女の人気者になっている。筆者もアラブの首都のホテルのテレビ番組に日本のアニメが頻繁に 現れるのにはびっくりしたり、大いに激励を受けたのである。

   デズニ-のアニメは、確かに長い歴史と巨大な資本をバックにした超一流の俳優 を使い、音楽、絵画の面で優れており、娯楽作品としては、最高級であろう。しかし 、端的に言って、それは所詮子供向きのアニメである。世界的にヒットした「ライオ ン・キング」にしても手塚治虫の「ジャングル大帝」の影響を受けていると言われて おり、内容の深さと高い芸術性と内容を持ち大人の鑑賞に耐えるもの言う点では日本 のアニメの方がもっと潜在力を秘めていると思う。 
 
  確か、1970年代の終わり頃と記憶するが、アラブ諸国で人気のある頓知者「ジ ョハ-物語」のアニメによる連続テレビ番組の制作の可能性を東映動画社に訪ねるた め来日したあるアラブの産油国の映画関係者がいた。結局、日本側ではアラブへの予 備知識がないのと、経費に随分金がかかるからということで話はまとまらなかったこ とがあった。     

  1995年3月、ムバラク大統領が国賓として来日された機会に、筆者は赤坂迎賓 館で、スザンヌ大統領夫人と、数人の日本の児童文化関係者とともに日本エジプト間 の児童文化の交流について約30分ほど話し合う機会をえて、日本の絵本やビデオを 提供し、『赤い鳥』以来の豊富な児童文化の経験を持つ日本の実情を報告したことが ある。  

  エジプトの児童の教育、文化の振興団体の会長として活発な活動を続けておられる 大統領夫人は、われわれの話に膝を乗り出して聞き入り、「エジプトでは子供たちに 読書を奨励したり、若い作家に児童向け読み物を書くことを進めたり、また児童図書 館、児童劇場を創設するなど一歩、一歩、運動を進めている。美しい絵本、素晴らし いアニメなど日本の児童文化は世界的に名高い。エジプトの子供に日本の劇を見せて やりたい。是非、日本の経験をエジプトに紹介してほしい」と日本からの協力を強く 要望された。  絵本づくり、識字運動、民話の発掘、共同出版などで、アジアの児童文化の向上荷 目覚ましい活躍をしているのは、日本のユネスコ・アジア文化センタ-(ACCU) である。隔年毎に行われている野間絵本原画コンク-ルには、エジプト、スーダン、 イラク、サウジアラビアなどアラブの国の童話画家は、グランプリをはじめ、各種の 賞を受賞しており、アラブばかりか、多くの発展途上国の児童文化の発展に大きな励 ましとなっている。  

  最近ではエジプトのアドリー・リズカッラーフの「ことばのない、メッセージ」( 第11回佳作、1998年度)が受賞している。作者は「人々の宗教対立がつづく今 日、愛と平和を求める願いを子供達がイラストをとおして感じることができるように 、柔らかな色彩のなかにこめこめました。文字のない、12枚のイラストでつづった 、子供たちメッセージです」とその内容をコメントしている。

  まだその全容は伝わって来ていないが、エジプトの児童文化活動は多岐に渡って おり、その活動をわずかなスペースで紹介するのは難しいのでその幾つかを紹介しよ う。 カイロでは毎年、国際児童映画フェスチバルが11月に開催されており、199 3年の場合には、32か国から140本の児童向映画が上映され、 日本もテレビ番 組『悪魔の追放』が金賞を獲得している。  

  1993年にアガカ-ン建築賞を受賞たサイエッダ・ザイナブの児童公園は、児童 のための遊びと文化を融合したもので、噴水、ド-ム、広場、覆いを持つ廊下などの 中世的な環境を造り出し、イスラム的様式、伝統的素材、この地域の歴史的意義を子 供たちに知らせるよう努力している。400人の子供が座れる野外講堂、人形劇や影 絵劇を演じる200人の小劇場もあり、地域の住民も参加できるという。  

  湾岸戦争以前、アラブ諸国の中でも、際立って児 童文化の育成に模範的な活動を 続けてきたのは、イラクの児童文化局であった。大量の絵本の廉価版や児童向けの優 れた雑誌の発行、児童合唱団の形成、有力作家による児童のための物語の作成など目 覚ましい活動をしていた。そして現在でも経済制裁かという悪条件の中でも児童文化 の向上に懸命な努力が続けれている。  

  長い児童文化発展の歴史を持つ日本は、洗う野路同文か専科と協力し、アラブの明 日の担う子供の秘められた才能を掘り起すという仕事こそ、地下資源の探査、発掘に も優るとも劣らぬという日本の果たし得る重要な使命ではなかろうか。


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