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劣化ウラン弾
湾岸戦争で何がおこなわれたか
国際行動センターほか著
(日本評論社・2000円)
劣化ウランは、ウランの派生物資で、米ソ核開発競争の結果 、米国内に大量に備蓄されている。米軍はこの金属の堅さを利用して砲弾を作り、湾岸戦争(1991年でイラク戦車部隊に対して大量 使用した。
本書は元従軍兵士や物理学者らが共同で執筆、劣化ウラン弾が鋼板を貫通 した後、瞬時に燃焼して大気中や地上に拡散、放射性や科学的毒性が人体や環境に影響を及ぼす可能性を警告した書の翻訳である。
米国では元従軍兵士らに出産異常が発生したり、体の不調を訴える湾岸戦争症候群 が問題となり、劣化ウラン弾も原因の一つとして因果 関係の調査が進められている。 日本もこの兵器と無縁ではなく、97年には米軍が沖縄・鳥島で劣化ウラン弾152 0発を誤射士たことが発覚、米穀が安全宣言を繰り返した経緯がある。 本書を読むと、 兵器の効果を優先する余り、危険性に目をつぶり、使用する兵士の安全確保に十分な 配慮をはらってこなかった「軍の論理」が鮮やかに浮かびあがってくる。
=新倉修監訳(芳)ー 毎日新聞 ー

被告ジョージ・ブッシュ有罪
ー国際戦争犯罪法廷への告発状
ラムゼイ・クラーク著
日本国際法律家協会訳
A5判148頁 631円
「ブックス・ブラクシス」(在庫僅少)

元アメリカ司法長官である著者が、湾岸戦争で「正義」の行動をとったアメリカと ブッシュ大統領の「戦争犯罪」を19項目にわたる罪状で告発。年表、関連法規資料 を付し、湾岸戦争を検証する資料として不可欠の書。対象原文付き
ラムゼイ・クラーク編著
戦争犯罪を告発する会訳
(柏書房)
いま戦争はこうして作られる
ラムゼー・クラーク 著
中平信也 訳
出版社:地湧社 神田  
Tel.3258-1251 Fax.3258-7564
1994年発行 
A4判並製 460頁
本体3,800円+税
TVゲームのように放映された「きれいな戦争」の陰に隠された米国の湾岸支配 への固執、爆撃で殺戮された何十万人のイラク国民。米国、イラクにとって、日本に とって、湾岸戦争とは何だったのか。 米国によって巧妙に仕組まれた戦争へのシナリオ、イラク国民に与えられた想像を絶 する攻撃と制裁により戦後も続く死亡者数の増加。元米国司法長官ラムゼー・クラー クは、空爆中のイラクで見たことや世界各地をまわって得た膨大な資料によって、メ ディアが伝えなかった戦争の実体とその構造を克明に検証していく。
<解説>押田成人

【第27夜】
湾岸戦争、劣化ウラン弾を見つめるよう
-イラク、沖縄、広島・長崎-

NATO軍がユーゴスラビア空爆で使用した劣化ウラン弾による放射能汚染の可能性 について、今ヨーロッパで抗議運動が高まっていると言う。

湾岸戦争の際にも、米軍は、劣化ウランを39万発もイラクに発射するなど、徹底し てイラクの市民生活、経済の基盤を破壊尽くした。

あの湾岸戦争を振り返って見た時、結局われわれ日本人は、135億ドルの貢献金を 払わされたにも拘らず、夜空にテレビゲームのように映し出される米軍の空爆シーン しか知らされなかったのではないか。

この湾岸戦争のイラク国民の殲滅作戦にも似た米軍の戦争犯罪の実状や「恐怖の兵器、 劣化ウラン」の恐ろしさを生々しく詳述したラムゼー・クラーク元アメリカ司法 長 官の著書、編書の日本語訳が4冊もあることは、何時また戦争協力を求められるかも 知れない現在の日本人にとって貴重な文献であると言えよう。
『湾岸戦争ーいま戦争はこうして作られる』ラムゼー・クラーク 著中平信也 訳 (地湧社)の中のアメリカの国際戦争犯罪を告発する同氏の燃えるような正義感と勇 気は感銘深いものである。しかし、こうした情熱も「私はアメリカを愛し、アメリカ 人の良心を信じている。だから政府を告発し、問い質すのです」と言うクラーク氏の かねての信条に基づくものであることを知る時、こうした一連の本の執筆、国際戦争 犯罪法廷の開催、彼を指導者とする国際行動センターの平和擁護活動も、それが彼の 祖国愛に基づくものであることに納得が行く。
確かに、米軍は、戦闘員あるいは非戦闘員の区別なくイラクを無制限に爆撃、クウェー トの油井の大半を米国空軍の爆撃で炎上させ、その賠償までイラクに払わせるという 巨額の賠償要求、数百万年まで残るという劣化ウランの発射、敗残イラク兵数千名の 生埋め、貯水場、病院などの爆撃による環境破壊など、さらに平時の戦争ともい え る経済制裁というジェノサイドなど今なお続けている、利潤のためなら他民族、いや 自国民の退役軍人の悲劇など全く意に介しないアメリカの軍産複合体の非情さ、冷酷 さには息を飲む思いがする。

「イラクは廃虚と化した。そこには、恐怖と死と人間として許されざる出来事があっ た。なかでも、イラクで行なわれたそれらの出来事を米国民が受け入れたという事実 ほど、あるいは、そう見えたことほど、将来にわたって脅威となるものはない。」 (334p)と同氏が述べているように、中東の石油の支配を目論む米軍に率いられ た多国籍軍のイラク爆撃は、米国国防総省は詳細な衛星写真を前にして、イラク市民 の生活を支える施設を選び、それを系統的に破壊する作戦に外ならなかった。イラク 国民の生活基盤を壊滅させること狙うこうした軍事作戦は、明らかにハーグ協定、ジュ ネーブ協定に違反した「国際戦争犯罪」であると同氏は言っている。

『劣化ウラン弾 湾岸戦争で何がおこなわれたか』国際行動センターほか著、新倉 修監訳(日本評論社)も、米軍、イラク人のく別なく、恐ろしい後遺症をもたらして いるこの放射性兵器、劣化ウラン弾の恐るべき毒性を詳述している。
 
とりわけ、この本の前書きの中で、世界で最初の被爆国である日本に熱い視線がそそ がれていることは注目に値する。
「広島・長崎でかくも多くの恐るべき苦しみを味わった日本の人々が、劣化ウラン による新たな危険に立ち上がり、このような生死にかかわる兵器の使用また製造を国 際的に禁止しようという私たちの呼びかけに賛同して下さると、私は確信ている。

ペンタゴンは、沖縄の射爆撃場で劣化ウラン兵器を発射したことがある。こうして ペンタゴンは、これまで沖縄の人々に対して行なってきた犯罪に新たな犯罪を付け加 えたのだ。このような犯罪に対して、幾十万の人々が米軍基地に反対することを明言 し、県民投票では米軍基地の撤去を求める声が過半数を占めた。世界の平和を求める 人は誰でも、自国の政府による犯罪への加担を拒否するアメリカ人は皆、日本から米 軍基地をなくすこの運動に参加するだろう。」(編集委員のジョン・カタリノット、 サラ・フランダース)。

なお、この本とは別に、湾岸戦争に従軍して被爆したピコー二等曹長の生々しい証 言や国連チャーチセンターでの集会を収録したビデオ「劣化ウランと恐怖」(Metal of Dishonor)〔日本語版〕は、 98年4月に〔企画〕 市民平和訴訟の会・東京 (野村修身)で 制作(35分・3500円)され、 ビデオプレス (TEL03-3530-8588)で入手できる。
『被告ジョージ・ブッシュ有罪』ー国際戦争犯罪法廷への告発状ーラムゼイ・クラー ク著 日本国際法律家協会訳と、『アメリカの戦争犯罪』ラムゼイ・クラーク編著、 戦争犯罪を告発する会訳の2冊(柏書房)も、他民族の大量殺戮をビジネス化してぼ ろ儲けを図る「死の商人」の国際法違反など全く無視してはばからない犯罪行為を見事に立証している。

『被告ジョージ・ブッシュ有罪』ー国際戦争犯罪法廷への告発状ーラムゼイ・クラー ク著 日本国際法律家協会訳と、『アメリカの戦争犯罪』ラムゼイ・クラーク編著、 戦争犯罪を告発する会訳の2冊(柏書房)も、他民族の大量殺戮をビジネス化してぼ ろ儲けを図る「死の商人」の国際法違反など全く無視してはばからない犯罪行為を見 事に立証している。
かねてから、ラムゼイ・クラーク氏は、日本人はもっと、アメリカが国際紛争に介 入する時は、必ず背後に大企業の利益が絡んでいると言う史実を知るべきだ、また、 あの湾岸戦争の時に、こうした大規模で病的な暴力の行使に日本が加担しなかったこ とを日本人はもっと声を大にして世界に誇らかに叫ぶべきだと、日本人に訴えている。 耳を傾けるべきであろう。

一般に、アメリカの戦争政策を批判することが反米とされるが、 ラムゼイ・クラー ク元司法長官の言う通り、アメリカにアメリカ憲法、国連憲章の原則に帰るべきと訴 えることが愛国的行為とするならば、アメリカに軍縮を迫り、海外の軍事基地を撤去 し、正義に基づく世界平和のために努力することが超大国アメリカの責務ではないか と主張することの方が本当の親米的行為と言えるであろう。なんでもアメリカの政策 に付和雷同、追随することが反米運動と烙印を押されるべきではないだろうか。歴史 を振り返ることの重要さは、ますます重要になってきていると思う。


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