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自衛隊のイラクへの派兵を食い止めるためのパースぺクティブな戦略構築を目指すために

「日本アラブ通信」編集長 阿部政雄

 アメリカの対イラク政策が大破たんに見舞われはじめている。正義に基づかず、青写真もなしに強引に実現しようとした石油の略奪戦争と言う砂上の楼閣が、根元から竜巻きのような嵐に吹きつけられ揺らぎ出している。

 イラク占領は、当初の計画とは違い事態は悪化する一方で、これまでにイラク駐留米軍兵士の死亡者は300名に近付き、このうち戦闘終結宣言した5月1日以降に、それ以前を上回る149名以上が犠牲になっている。兵士の家族から、イラクからの早期の引き上げを求める声を高まっている。米軍はますます泥沼にぶくぶく沈みはじめている。
 
 イラク戦争とその占領の費用も、既に湾岸戦争を大幅に上回っており、ブッシュ大統領は7日の演説で870億ドルの追加予算を議会に求め、名指しで日本の積極貢献を要求し、米政府高官は当面必要な復興費用を「500億-750億ドル」と見積もっていることを明らかにした。チェニー副大統領によればこの870億ドルもさらに追加予算が必要と言う。

 当然、ブッシュ大統領の支持率も52%とダウンし、その人気の低下に歯止めかからず急降下中である。

そこで、焦りぎみのゴッドファーザー、ブッシュ大統領は、事前の連絡もなく突然、10月17日に来日し、ブッシュ政権に忠誠無比の全面協力を誓った可愛い子分、小泉首相に約束通り、自衛隊の派遣と復興予算に多額の金額を拠出させようと迫るものと見られている。

 総選挙を真近かに控え、自衛隊を出して犠牲者でも出だ時のマイナス面も生じかねないと、渋い顔をしているのか、あるいは自衛隊の若葉マーク卒業が早くなったとほくそ笑んでいるのか、また、多額の貢納金にしても「超大国の大統領の別荘」に招いたばかりか、ブッシュ親分の盃まで頂戴し、「男、純一郎」を持ち上げてくれた謝礼としては仕方がない、総裁再選にはプラス材料だ、どっちみち払うのは、俺の金ではない、国民からの税金で済むことだ「ケセラーセラー、なるようになれ」とたかをくくっているのはか分からないが、何はともあれ、日本の首相なのだから「ドント・ゲット・アウエイ・フロム・ジャパン」と啖呵のひとつも吐きたくなる。

 予期せぬ事態の展開にうろたえたブッシュ大統領は、イラク問題に関し、国際社会に対して国連安保理での過去の対立を水に流して協力するように求めたが、肝心の主導権については欲の皮の突っ張った立場を捨てていない。まるで壷の中のクルミを拳にいっぱい握りしめたまま、壷から手が抜けないと騒いでいる猿そっくりではないか。

 とにかく、劣化ウラン弾を大量に落とそうが、クラスター爆弾を雨のように降らようが、利潤になりさえればいいというネオコンにとって、一旦にぎった儲けは死んでも離さないというのが、「死の商人」の家訓なのであろう。

 TUP-Bulletinによれば、「石油価格の戦時高騰の結果、これまでの3ヶ月期におけるシェブロン・テキサコ社の収益は4倍に増えて、16億ドルに達し、シェブロン・テキサコ、シェル、ブリティッシュ石油、その他の巨大石油企業は、早々に米英占領につけこんで、イラク原油購入契約を勝ち取り、荒稼ぎしている。甘い汁をたっぷり吸うことができるであろう。」という。

 「アメリカ占領当局が大言壮語して、多国籍企業へのイラク石油の売却収益はイラクを利することになると布告しているが、現実はそれほど単純ではないようだ。イラク原油売却収入は基金に組み込まれ、イラク『再建』資金として、他業種多国籍企業への支払いに当てられることになる。これらの企業群には、石油・エネルギー業界向け製品・サービスの世界最大手であり、第1次湾岸戦争の最大受益企業でもあったハリバートン社(推定契約額11億4000万ドル)とか、何よりもイラクの水道事業の私営利権を渇望しているベクテル社も含まれている」とのことである。

 小泉首相がアメリカの産軍複合体の営業部とも言うべきブッシュ政権に覚えのめでたいのは当然であろう。その理由は、ネオコンは、「戦争から生じたイラクの破壊からの復興資金は、アメリカ以外の国々からできるだけ出させるのが、ネオコンにとっての腕の見せ所だ。この点、日本の小泉首相など、こちらが頼みもしないうちから、イラク戦争には、イージス艦も自衛隊も、復興資金も何でも御用立てしますぜ、と申し出てくれるではないか。こんなネオコン族の守り本尊のような奇特な首相には、日本の首相として再選はおろか、3選もしてほしい位だ。日本の首相を他の国も見習えばいいのに」と思っているからではないかと考えている。

 俗に、「親亀がこけたら、その甲羅にしがみついていた子亀はふるい落とされる」のが通り相場なのだが、ネオコン一家は、小泉首相が、ただ単に背中から転げ落ちると言っただけでは、済まされないのだ。小泉首相が首相であるうちにとにかく、自衛隊を派遣させ、イラク人を殺傷させ、「日本の手をアラブの血で汚させる」ところまで、持っていかないことには、ネオコンにとっての忠犬ポチの役割は終わっていないのである。

(自国の首相を忠犬ポチと呼ぶなど、寝覚めが悪いことおびただしいが、今ではマスコミでの愛称とさえなっている以上、使わないのも悪い気がする)

回りくどい前口上は抜きにして、ズバリ言えば、日本がが550億ドルを払うと言ったところで、アメリカの思惑とはほど遠い。(もちろん、そんな金を日本がびた一文払う必要はないし、そんな国民の福祉、教育を犠牲にする費用分担などすべきではない)。アメリカの狙っているのは、この多分におっちょこちょいの忠犬が首相のポストにいる限り、何としてでも日本はやはり帝国主義国家ということを、アラブ中東の人々に実物教育し、日本のこれまでの声望を失墜させ、あわよくば、日本を中東地域から追い出したいのである。とにかく、おだてたり、おどしたり、あの手この手とポチの鼻先にえさをぶら下げて釣り上げてしまおうと言う作戦であろう。それにしても、小泉氏はたとえ保守であっても日本の憲法の原則を尊重してきた戦後の首相達のことをどう思っているのだろうか。やはり変人も変人で、奇人のたぐいなのだろうか。

 アラブ諸国と付き合いはじめてから、もう半世紀にも近くなると言う小生の経験からして痛感することは、明治時代の日露戦争で西欧大国ロシアにた対する勝利とその後の長い歴史の中で育まれたアラブの人々の日本への憧れ、尊敬、親愛の気持ちなど(いわゆる「幸福な誤解」と言える一面も持っていたが)アラブ中東地域にみなぎる親日感情のエネルギーは、日本にとってかけがえのない資産であり、むしろ21世紀においての日本の進路を指し示す、貴重な宝物であるということである。

 前にも、発言したことがあるが、将来、「イラクがイラク人の手に帰り」、イラクの復興が軌道に乗ったとき、イラクが一番復興のために汗を流してほしいのが、他ならぬ日本と日本人なのである。そして、復興事業など頼もうなど毛頭考えず、ただひたすら一日も早く引き上げて欲しいのが、アメリカとアメリカ人である。もっとも、アメリカの占領軍のおかげで、ヨルダンの銀行で横領事件をしでかし、今なお追求されているようなイラク国民会議議長のチャラビー氏のようないかがわしい人物でもイラク暫定評議会の議長にでもなれる現在、ごくごく少数派とは言え、アメリカ拝跪主義のイラク人が存在することは否定できない。しかし、こうした人物達は、アメリカが去ったら、また「風とともに去る」人々であろう。

 これまで、膨大な人数のイラク人を大量破壊兵器で殺りくし、湾岸戦争以来13年に続いた経済制裁によって100万とも150万とも言う、幼児、女性、高齢者を死なしていることを忘れてしまったアメリカは、イラク人全体から、自分たちは「招かざる客」とみなされていることに思い知らされはじめている。

 今後、アメリカが狙うことは、できるだけ、イラク人とクルド人、イラク人同士を宗派の違いを誇張して宣伝し、内部の対立、混乱を助長させ、できることなら内乱にまで持っていくことを画策するに違いない。ヨルダン大使館の爆破事件の背後にチャラビ氏の影がいるとかどこかのメールで読んだことがあったが、国連事務所爆破事件は、国連の声望がイラクで高まるのを恐れる単独行動主義の反映ととらえることができるし、ナジャフの回教寺院銃撃事件でシーア派の指導者を殺害し、サダムの残党の仕業と触れ回ることによって、シーア派とスンニー派の激突まで画策したのではという噂も流れている。

 何しろ、日本の真珠湾攻撃を事前に知っていながら、潜水艦の通りやすいように、防御網を開いて待っていたとか、ベトナム戦争を開始するのに、トンキン湾事件をわざと起こしたとか、最近では、例の9・11事件がたとえ、ビンラーディーンのグループがやったにせよ、あの事件を知っていた政府関係者はかなりおり、とりわけあの日の2日前にユダヤ人には貿易センタービルの事務所に誰が一人として出社しないようにと言うおふれがまわされ、事実、ユダヤ人は一人も死んでいなというのも気味の悪い話しだ。

 最後に、戦中派のしんがりに属する小生が、大量破壊兵器と聞いてすぐ連想するは、アメリカの広島、長崎への原爆投下である。こうした非戦闘員を情け容赦なく殺りくする点では、米英とともに、パレスチナ人を虫けら同然に平然と殺すイスラエルのシオニズムを連想する。

 一説によると、イラクの土地の買収に奔走しているユダヤ人もいるとか、そうしたユダヤ人の住む建物は、米軍の警護が厳重だともバクダードから帰った人に直接きいたことがある。何しろ、イスラエルの国旗に描かれているダビデの星の両側に水色の二本の線は「ユーフラテスからナイルまで」と言う旧約聖書の言葉由来しているという。

 小生は、4月に出した『イラクとともに30年』(出帆新社)の中で、今世界をのっしのっしとのし歩くのは、双頭の大蛇(ネオコンとシオニズム)と書いたが、石原都知事の暴言にもうかがえるように、現在の世界の紛争対立の中でも人種差別主義の問題は今後もっともっと真剣に検討されるべきである。

 アメリカの主要な反戦平和団体のInternational A。N。S。W。E。R (Act Now to Stop
War & End Racism! は訳せば、「戦争を阻止し、人種差別主義を終わらせるため今こそ立ち上がろう!」と言う運動である。

 イラクの問題は、もっと時間的にも、空間的にも広いパースペクティブな視点から見つめ直されるべきで、時とともに起伏する現象に振り回されていたのでは、仲間割れしたり、各個撃破されていくばかりではないかと危惧する。もっと巨悪の根源をしり、平和と文化を愛する多くの人々を結集することができる、文化、平和、ヒューマニズムのルネッサンスを目指すような骨太な戦略を構築せねばならない時期にきているのではないかと真剣に思っている。

 このことについても、もっと書きたいことがあるが、ちょうど時間となってしまいました。後はまたの機会といたさせて頂きます。



拝啓   小泉首相殿(1)

拝啓
小泉首相殿  

1 自衛隊員のイラク派遣の是非について

公私多忙を極める首相にあえて進言いたします。
今貴方様は、77%の国民が反対しているにも関わらず、遮二無二イラクへ日本の自衛隊を送ろうと懸命になっていらっしゃいます。
しかし、自衛隊のイラク派遣は、日本のためにも貴方のためにも悲惨な結果しか生まないと言うことを御忠告申し上げます。
端的に言って、貴方が自衛隊を正当な理由もなくイラクに送ることは、これから、際限もなく日本と日本人にとって量り知れない苦悩、損失をもたらして行くことでしょう。
その理由は多々ありますが、とても短い時間で説明できることではないので、これから、今国会終了の日まで、毎日少しづる手紙を差し上げることにいたします。
今日は、自衛隊員のイラク派遣の是非についてです。
● まず、自衛隊をイラクに送る正当性は何もないことです。
* 国連はイラクへの派兵に賛意を示したわけでなく、インドも大義なき派兵を切っぱりと拒否しました。ドイツは反対、フランスも派兵しないと言っています。ポーランドとか、韓国など”傭兵”としての代償を求める国の中で、国民の税金まで使って 重火器を持ってイラクに派兵する大国は日本だけです。この派遣の正当性について、 改めて国民に分かりやすく説明して下さい。
 (この際、言っておきますが、日本の政治の主人公は国民であることをもっと自覚 して 下さい。憲法にはっきり書いてありますよ。万一、貴方が外国の元首に忠誠を誓うこと を日本の首相として第一義的に考えているいるとすれば、それは”変人” ではなく、” 奇人”であり、歯に衣を着せず言えば、昔よく使われた”売国奴”がする行為に似てい ます。)
* ”招かざる客”自衛隊はイラクでは歓迎されないでしょう。まして、イラク人は 世界の中でもとりわけ日本を尊敬し、日本人を世界の中で一番愛しているといいほど 親日的な人々なのです。その恋人が銃口を突き付けてイラクに軍靴(ブーツ)で乗り込んでくる。そしてイラク人をも殺傷しかねない占領軍の”雇われ兵”として現れた ら、「百年の恋も一気に醒める」と言った生易しいものでなく、まして自衛隊がイラク人を一人でも殺せば、日本人はイラク、アラブの敵と変身してしまうでしょう。自衛隊員の誇りも考えて下さい。
*そうなれば、自衛隊が行くところはみな戦場になってしまいます。何時襲撃されてもおかしくないでしょう。万一、いや発生する可能性の方が高いのですが、自衛官が 一人、または複数殺害されることになったら、日本は報復攻撃に出ますか。これは正に侵略戦争です。過去の日中戦争、太平洋戦争の誤りを日本は反省したばかりでないですか。
*最近、イラクから帰って来たカメラマンの話をメール上で讀みました。米兵は、絶えず緊張しているようです。また、チグリス川から米兵が吊り上げられたという噂も聞き、米兵の死亡者の数は報道されている数以上だと思ったそうです。
一般の日本人への好意はまだ残っているとのことですが、貴方の指示で、銃を持って現地入りした自衛隊はそうした日本にとって貴重な財産である親日感情を情け容赦なく掃討していくことでしょう。
*思い出すのは、1983年に、ベイルート駐在中のアメリカ軍海兵隊兵舎とフランス軍司令部に、ヒズボラ兵士のトラック爆弾で297人もの犠牲者を出した結果、アメリカの海兵隊はベイルートから撤退したことです。また1993年、ソマリアで18名の米兵の遺体が路上で引き回される殺害されたため、米軍は総引き上げを決定した事件もありました。
小泉首相。万一こうした事態がイラクで起ったら、自衛隊への報復戦争としてイラクと戦争しますか。待って下さいよ。要請されたのでもないのに、イラクに押し掛けたのは、自衛隊の方ですよ。貴方は間違いもなく、戦犯として国際法廷で裁かれるでしょうね。
その覚悟はお有りですか。
*貴方は、このイラク派兵はブッシュ大統領に約束したことだから破られないとおっしゃるかも知れません。しかし、こんな戦後日本が辿って来た平和国家としての国是 を、貴方とブッシュ大統領との中がいかに”特殊な関係”であれ受け入れがたい話です。最高裁が憲法を守らせる立場にあるはずですが、とにかく日本の憲法に照らして、 貴方は憲法違反の重大事を国会にも諮らず約束してくるなんて、常軌を逸しています。 国民も77%&イラク派兵に反対していることも忘れないで下さい。
「過ちを改めるに憚ることなかれ」です。ブッシュ大統領に「あれは私の早とちりでした。国民の意見をよく聞いたら、派兵は過ちでした。貴方にも間違った情報を提供して申し訳ありませんでした」と素直に詫びればいいのです。
貴方にとっての主人公は何と言っても日本国民ですから、ブッシュさんも文句の言い様はないでしょう。そのブッシュさん自身だって人気にかげりが出始めているのでから、いい潮時ではないですか。
小泉さん自身の人気も下降ぎみなので、この際、路線を変更の方がもう一度、小泉ブームが出現しないとも限りません。少なくても、悲嘆にくれる、死亡した自衛隊員の家族にお詫びに訪れたり、戦費調達のために悪税を儲けて憎まリたり、徴兵制まで導入することで若者に嫌われるより、ここらで人間の赤い血をながす”戦争ごっこ”から足を抜いた方ガ身のためだと思うのです。しかし、小泉さんがその軍国路線こそ、俺の宿願だった言う返事が返ってくるかもしれません。ないおか言わんやです。その時は貴方は”今東条”として歴史蜷をとどめるでしょう。東条首相は”日本のための戦 犯”であったが、貴方はの場合は”ブッシュ大統領のための戦犯”という違いはありますが。
 もう今日の時間が残りすくなになりました。 最後に、明治39年に日本でも人気のあった添田唖蝉坊の作詞によるラッパ節を紹介します。

名誉名誉とおだてあげ 大切な倅(せがれ)をむざむざと
砲の餌食にだれがした
もとの倅にして返せ トコトットット
大臣大将の胸先に
ピカピカ光るは何ですえ
金鶏勲章かちがいます
可愛い兵士のしゃれこうべ トコトットット 

当時大流行したと言われるこの唄は軽快なリズムの歌いやすいものですが、こうした内容の濃い唄こそ朗々としていて、オペラ向きです。是非小泉首相の御努力で「しゃれこうべ」と言って歌劇でもつくり全国に広めれば、小泉人気も一段と上がるものと思います。
付記: 小生は戦前派にのしんがりに属する75才です。少し辛らつな言葉を吐きましたが、御容赦下さい。これもいづれ早晩小泉首相を襲うに違いない苦境からを貴方を救いたい老婆心(老爺心?)の現れとお察し下さい。では、また明日。

                           アラブ問題専門家
                           日本ペンクラブ国際委員
                          「日本アラブ通信」編集長



拝啓     小泉首相殿(2)

拝啓
小泉首相殿
 今日は、あの戦争の正当性について意見を述べさせて頂き、首相からも回答をお持ちしています。 昨日の新聞は、小泉首相はオーストラリア首相に例の「サダム・フセインが見つからないから、大量破壊兵器兵器がなかったと言えない」という恥ずかしい屁理屈を披露 したそうですね。豪首相が悩むのは、それだけの理由があってのことで、政治家としての良心があるためで、あのイラク戦争が正当であったかどうかを真剣に問い直す大 きな機会だったのに、貴方はそれをはぐらかしてしまった。罪つくりな方ですね。
事実、米英の両政府は、あの戦争が正当な根拠のないまま開始されたことにより、議会は民間からの批判を浴び、揺らいでいます。イラク攻撃の根拠にしていた大量破壊 兵器兵器が見つからねば、米英は不当な正義にもとづかぬ戦争を仕掛けた訳ですから、 当然のことながら、いづれ国際戦争犯罪法廷で裁かれる日がきてもおかしくないでしょ う。
疑いだけで他国に兵をすすめることを国連憲章も、日本憲法も、国際法も認めていません。観劇で忙しい時間を少し割いて、こうして基本的な国際的原則を学んで下さい。 それに、イラクに戦争を仕掛けるのは、民族自決権の侵害です。あの悲惨な二度にわ たる世界大戦の惨禍の中から結成された国連の憲章の大きな柱となっているのは、民族自決権でした。日本から高碕逹之助国務相が参加した1955年のバンドン会議で も、主権尊重、民族自決権、平和共存はもっとも強調された原則です。
他国の政府が気にくわないと言って、その国を攻撃することが許されるでしょうか。 小泉首相が靖国神社に参拝するのは、けしからんといってアジアの近隣諸国が日本を攻めてくる権利を持つのでしょうか。
イラクの前政権が独裁的であったからと言って外国が武力を行使することが許されるのであれば、それは国際社会が”弱肉強食の密林”と化すことです。新しい時代錯誤の帝国主義時代の再来なのです。
とにかく、ブッシュ大統領の人気は9・11事件以前に戻り、ますます下降ぎみです。 それでもこの「張り子の虎」の正体が日々暴露されてき始めているアメリカ大統領とあくまで心中しようと言うのでしょうか。
それに、正当性のない、無法な戦争であることは、アメリカが劣化ウラン弾、クラスター爆弾、バンカース爆弾だの大量殺戮兵器を使い、ジェノサイドにも近い形でイラクの尊い市民の命を奪い、国土を荒廃せしめ、そのくせ石油利権だけはごっそりと着 服しようとしているのです。
『鬼平犯科帳』出活躍する 「火付け盗賊改め方長官」長谷川平蔵(実在の人物)が今生きていたら、アメリカのイラクの侵略を火付け盗賊と断罪して取り調べるでしょう。日本はその大盗賊の子分としてイラク占領の手助けに奔走するなんて、全く御先祖様にすまない光景です。
小泉首相、このような不法なアメリカの対イラク戦争に、日本政府は参加する必要があるのですか。去年だったか貴方が訪米する前に、アメリカ大統領にその政策に疑問点があった場合は”友情ある説得”をすべきだと元総理たちの長老たちにアドバイスされましたね。また河野洋平元総裁から、「日本はもっと外交努力」と注文つけられ たのを覚えています。
小泉首相は、こうした努力を果たしてどれだけされたか、是非聞きかせ願いたいものです。
最後に、アメリカがイラクに加えた残虐行為について、貴方はどれだけ、認識していますか。湾岸戦争の時にイラクに800トンも落とされた凶悪兵器の劣化ウランによって、南部バスらの母親たちは、赤ちゃんが生まれた時に、昔のように「男の子、女の子?」と聞くのではなく、「正常な子、奇形児?」と聞くと言われています。今回は あの歴史的な大都会、バグダードのまっただ中にアメリカは劣化ウランを大量に降り注ぎました。正に鬼の仕業です。これから、バクダードを滞在する米軍兵士も自衛隊も放射能に曝されるのですよ。アメリカでも6万人7万人の退役軍人が劣化ウランの後遺症に今でも苦しんでいます。
これが正義の戦争ですか。小泉首相から言いにくいでしょうが、ブッシュにこうした残虐な兵器は破棄したらどうかと言って下さい。また/あの市民を広範囲に無差別殺戮をするクラスター爆弾を自衛隊が装備しようとか讀みましたが、これも「改革の王者」小泉さんは恥ずかしいと思いませんか。
こうしたことがだんだんと明らかになって来ているのに、日本は何が悲しくて、膨大な国家予算を使ってまで、生身の自衛隊を、何の憎しみをないイラクの人々に対する占領政策の”傭兵”(しかもこちらの予算で)として送らねばならないのですか。 前にも書いたと思いますが、イラク国民の民族的抵抗は、その真の独立達成まで、10年も、20年もまかり間違えば、パレスチナのように50年から100年の戦争になるかも知れません。
今、何が何でも自衛隊を送ると言うのは無責任の骨頂です。それは「匹夫の勇」に過ぎません。
小泉首相は2年も立てば引き上げることもできるなど悠長な考えを持っているかも知れませんが、それは絵に書いた持ちでしょう。悪く考えれば、アメリカの罠にはまって、日本は永久にイラク、中東に自衛隊(実質的な他衛隊)ずっと駐屯させねばならなくなるようプランを考えているのではないかと思われてなりません。まして、人のいいこと(?)では、国際級の小泉首相のことだから、成りゆき負け、ケセラセラと承諾してしまうのではないかと気がかりです。
そんなことになれば、日本は世界の笑われ者になること必定です。 賢明なる小泉首相、どうか、悔いを潜在に残さない外交政策を展開して行って下さい。
自衛隊の他衛隊にするなんて考えないで下さい。後生ですから、世界の人々から、 嘲笑を侮蔑を受けること必定ですし、日本の名誉のためにも、そして貴方の名誉のためにも。
ではまた明日。
                                 阿部拝



拝啓     小泉首相殿
書簡 2 戦争の正当性について

拝啓
小泉首相殿

書簡 2 戦争の正当性について

今日は、あの戦争の正当性について意見を述べさせて頂き、首相からも回答をお持ちしています。
昨日の新聞は、小泉首相はオーストラリア首相に例の「サダム・フセインが見つからないから、大量破壊兵器兵器がなかったと言えない」とう恥ずかしい屁理屈を披露したそうですね。豪首相が悩むのは、それだけの理由があってのことで、政治家としての良心があるためで、あのイラク戦争が正当であったかどうかを真剣に問い直す大きな機会だったのに、貴方はそれをはぐらかしてしまった。罪つくりな方ですね。
事実、米英の両政府は、あの戦争が正当な根拠のないまま開始されたことにより、議会は民間からの批判を浴び、揺らいでいます。イラク攻撃の根拠にしていた大量破壊兵器兵器が見つからねば、米英は不当な正義にもとづかぬ戦争を仕掛けた訳ですから、当然のことながら、いづれ国際戦争犯罪法廷で裁かれる日がくてもおかしくないでしょう。
疑いだけで他国に兵をすすめることを国連憲章も、日本憲法も、国際法も認めていません。観劇で忙しい時間を少し割いて、こうして基本的な国際的原則を学んで下さい。
それに、イラクに戦争を仕掛けるのは、民族自決権の侵害です。あの悲惨な二度にわたる世界大戦の惨禍の中から結成された国連の憲章の大きな柱となっているのは、民族自決権でした。日本から高碕逹之助国務相が参加した1955年のバンドン会議でも、主権尊重、民族自決権、平和共存はもっとも強調された原則です。
他国の政府が気にくわないと言って、その国を攻撃することが許されるでしょうか。小泉首相が靖国神社に参拝するのは、けしからんといってアジアの近隣諸国が日本を攻めてくる権利を持つのでしょうか。
イラクの前政権が独裁的であったからと言って外国が武力を行使することが許されるのであれば、それは国際社会が”弱肉強食の密林”と化すことです。新しい時代錯誤の帝国主義時代の再来なのです。
とにかく、ブッシュ大統領の人気は9・11事件以前に戻り、ますます下降ぎみです。それでもこの「張り子の虎」の正体が日々暴露されてき始めているアメリカ大統領とあくまで心中しようと言うのでしょうか。
それに、正当性のない、無法な戦争であることは、アメリカが劣化ウラン弾、クラスター爆弾、バンカース爆弾だの大量殺戮兵器を使い、ジェノサイドにも近い形でイラクの尊い市民の命を奪い、国土を荒廃せしめ、そのくせ石油利権だけはごっそりと着服しようとしているのです。
『鬼平犯科帳』出活躍する 「火付け盗賊改め方長官」長谷川平蔵(実在の人物)が今生きていたら、アメリカのイラクの侵略を火付け盗賊と断罪して取り調べるでしょう。日本はその大盗賊の子分としてイラク占領の手助けに奔走するなんて、全く御先祖様にすまない光景です。
小泉首相、このような不法なアメリカの対イラク戦争に、日本政府は参加する必要があるのですか。去年だったか貴方が訪米する前に、アメリカ大統領にその政策に疑問点があった場合は”友情ある説得”をすべきだと元総理たちの長老たちにアドバイスされましたね。また河野洋平元総裁から、「日本はもっと外交努力」と注文つけられたのを覚えています。
小泉首相は、こうした努力を果たしてどれだけされたか、是非聞きかせ願いたいものです。
最後に、アメリカがイラクに加えた残虐行為について、貴方はどれだけ、認識していますか。湾岸戦争の時にイラクに800トンも落とされた凶悪兵器の劣化ウランによって、南部バスらの母親たちは、赤ちゃんが生まれた時に、昔のように「男の子、女の子?」と聞くのではなく、「正常な子、奇形児?」と聞くと言われています。今回はあの歴史的な大都会、バグダードのまっただ中にアメリカは劣化ウランを大量に降り注ぎました。正に鬼の仕業です。これから、バクダードを滞在する米軍兵士も自衛隊も放射能に曝されるのですよ。アメリカでも6万人7万人の退役軍人が劣化ウランの後遺症に今でも苦しんでいます。
これが正義の戦争ですか。小泉首相から言いにくいでしょうが、ブッシュにこうした残虐な兵器は破棄したらどうかと言って下さい。また/あの市民を広範囲に無差別殺戮をするクラスター爆弾を自衛隊が装備しようとか讀みましたが、これも「改革の王者」小泉さんは恥ずかしいと思いませんか。
こうしたことがだんだんと明らかになって来ているのに、日本は何が悲しくて、膨大な国家予算を使ってまで、生身の自衛隊を、何の憎しみをないイラクの人々に対する占領政策の”傭兵”(しかもこちらの予算で)として送らねばならないのですか。
前にも書いたと思いますが、イラク国民の民族的抵抗は、その真の独立達成まで、10年も、20年もまかり間違えば、パレスチナのように50年から100年の戦争になるかも知れません。
今、何が何でも自衛隊を送ると言うのは無責任の骨頂です。それは「匹夫の勇」に過ぎません。
小泉首相は2年も立てば引き上げることもできるなど悠長な考えを持っているかも知れませんが、それは絵に書いた持ちでしょう。悪く考えれば、アメリカの罠にはまって、日本は永久にイラク、中東に自衛隊(実質的な他衛隊)ずっと駐屯させねばならなくなるようプランを考えているのではないかと思われてなりません。まして、人のいいこと(?)では、国際級の小泉首相のことだから、成りゆき負け、ケセラセラと承諾してしまうのではないかと気がかりです。
そんなことになれば、日本は世界の笑われ者になること必定です。
賢明なる小泉首相、どうか、悔いを潜在に残さない外交政策を展開して行って下さい。自衛隊の他衛隊にするなんて考えないで下さい。後生ですから。、世界の人々から、嘲笑を侮蔑を受けること必定ですし、日本の名誉のためにも、そして貴方の名誉のためにも。
ではまた明日。

                                 阿部拝



拝啓     小泉首相殿
第三書簡 「戦争ごっこ」はもう沢山

拝啓 小泉首相殿。
今日は3回目の手紙を差し上げます。お寝覚めは如何ですか。

 今回は、イラク復興への真の貢献とは何かについての意見を述べさせて頂きたいと思っていました。しかし、今朝の朝日を開いてみたら、貴方は、「自衛隊の派遣の時期にはこだわらない」と記者団に語り、政府は11月以降に先送りする方向で検討に入ったと言う。
 小生は、自衛隊を未だに戦場になっているイラクに送ることは、屠殺場のまっただ中に送るようなもので、こんな非人道的なことを小泉さんがよくもやるなあと暗たんたる思いがしていました。 悪いことは言いません。この際こんな出来もしない、大義もない派兵はいっそ廃案にしたらどうでしょうか。そしてイラク復興特別措置法と言う名前通りの、一切軍事にかかわりのない援助に切り替えることをお薦めします。
 その方が、膨大な国費と尊い人命を失わずにすみ、これからますます厳しくなるイラクの情勢の対応に貴方は、針の山に上るような苦しみ、ジレンマをなめ続けていくのではないかと御同情申し上げるのです。そして、国会議員の諸先生の金科玉条である憲法には「国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」とうたわれています。このイラク特措法は、「選良」であるべき先生方が多くの時間を
費やして、国費を浪費して、論議すべき内容であるととても思えません。
 いわば、こうしたアラブ中東の事情のイロハも勉強せず、国民全体に不安と怒りを巻き起こしている「イラク派兵ドタバタ劇」は一日も早く幕を引いて下さい。 こんな法案は貴方のためにも、そして何よりも日本国民のため、いやイラク国民、アメリカ国民のためにならないのです、冷静に横から観察する限り、貴方はにやにやしながら、他国民を大量に殺して金を儲けるといったネオコンほど冷酷非情でもなさそうだ、とても『失楽園』のサタンや『ファウスト』にでてくるメフェストテレスのような悪魔ではないと思います。ただ「国政はわたしのためにあるよ」と好き勝手な解釈をして、得意のパーフォーマンスと気の利いた言い逃れのキャッチフレーズをひねり出す才能でこれまで首相の座を辛うじて守って来れたのです。しかし、現実はそんな甘い者ではない。一国の総理たるものがどんなに重要な責務を負っているか真剣に考えて下さい。
 先日メールへの投稿で、「桐一葉、落ちて天下の秋を知る」ということは言葉を引用しましたが、激変するイラク情勢に対応できなくなった、日本政府はこれから増幅する無数の難問題ーー日本とアメリカの摩擦、全国的な国民の反対運動、日本経済の悪化などの対応にますます窮していき、桐一葉どころでなく、葉っぱはすべて風に飛び、こうした外国にこびへつらうための醜悪な日本の政治の実体が国民の前に赤裸裸らにさらけだされて行くでしょう。小泉さん、 今が潮時です。イラク法案など、中学生だっておかしいと思う悪法はきっぱり廃案にして下さい。
 さて本題に戻って、この数日の政府の答弁、対応を見たり、聞いたりしていると、貴方ばかりか、貴方の側近と称せられる人々の答弁がいはゆる「朝令暮改」になってきているこことが、よく分かります。例えば、福田官房長官は昨日17日午前の記者会見で、イラク各地で相次いでいる米軍への襲撃について、「局地的に行われている散発的なもの」と述べたと思ったら、午後の参院外交防衛委員会で、「もっと早急に治安が回復されると期待していたが、状況は変わっていない」と述べ、治安情勢に懸念を表明しました。イラクに派兵しているのが川口外相は40カ国といっていたのが、4カ国ほどだとかいいうじゃないですか。その数字だって怪しいものです。もともとウソで固めた口実で開始されたいイラク戦争なので、いかに300代言とはいえ、破局的速度で、言い繕いにも行き詰まっていくでしょう。
 
 川口順子外相はまた昨日「戦闘が基本的に終了しているという判断は変えていない」と強調しましたが、それでいいのですね。ところが、米国防総省での記者会見で、アビザイド米中東軍司令官は16日、米軍を旧フセイン政権の残存勢力などが攻撃し続けている状況は、現在「ゲリラ戦」が展開されているという認識を示したそうじゃないですか。
 その肝心の米軍はどうかというと、「イラク前線の米兵士たちは、長引く駐留の中で危険のまっただ中にあり、暑さと不安に苦しんでいる。彼らの士気は「どん底」と言ってもよいほどに落ち込んでいる。ある隊の将校は、兵士たちの精神状態をこう述べている。「聞いてくれる人なら誰にでも不満をぶちまけている。手紙を書き、泣いて、叫んでいる。兵士たちの多くはそこら辺を歩きまわり、見るからに疲れていて意気消沈している。まるで自分たちの意志がまったく反映されない戦闘シミュレーションゲームの歩兵になったような感じだ」という記事もあります。
 イラク駐留中の不満を抱える兵士の中には自分の部隊を米本国に戻して欲しいとの手
紙を議会に送る者もいて、「帰還できるなら預金をぜんぶおろしてもいいとみんな思っている」と訴えている。(TUP-Bulletin)
 きのうはまた、連日の米英軍襲撃など治安状態が悪化、駐留の長期化が確実視される中で、イラク「最前線」の米兵から16日、「国防長官に辞任を要求する」との極めて異例な公然批判が噴出したともいわれています。
 とにかく、ことここまで、来た以上、血なまぐさい「戦争ごっこ」の法律は全部廃案にした方が、国民のためにも、貴方自身のため、貴方を支えている与党3党と民主党の中にいる軍事オタクの「戦争を知らない」「恐るべき子供たち」(アンファン・テリブル)のためになるのです。子供というのも失礼で、かなりの年齢に達した方々です。
 国民の立場からすれば、こうした悪法を通す国会議員はすべて、国の最高法規である日本国憲法を壊そうとする「反乱軍」なのです。その家族もわれわれ国民も泣いているのです。今からでも遅くないのです。是非政治の本流に返って頂きたい。さもないと「外遊内歓」をモットーとする貴方も呑気に好きなオペラ鑑賞や外国の名所見学(余り在任中にすることでないとは思いますが)もできなくなります。
 この際、以前から考えていたことを申します。小生は、ピラミッドの前で、ラクダに乗り、御満悦な小泉さんの写真を見て、貴方も人類文明発生の地、イラク訪問をして頂きたかったと思っていました。何しろ6000年の歴史を誇る国だけあって、壮大な古代の歴史的遺跡や、中世の世界で黄金のアラブ文明の中心地であったバグダードを見ないことには、その世界の観光旅行も「画竜点晴を欠く」ということになると存じます。テキサス荒野にあるブッシュ大統領の別荘もそれなりの趣きがあると思い
ますが、アメリカを知るとともに、イラクを知ることも大事だと思います。次の旅行はイラクへとお薦めしたのですが、自衛隊を送ってしまったら「おしまいよ」というところです。自衛隊を送れば、石でも投げられる覚悟でいって下さい。派遣中止したら、ニコニコ顔で迎えてくれる可能性は残っているでしょう。インシャーラー。
 バグダードのことを書いた影響でしょうか、急に女流講談師の始祖ともいうべき「アラビアンナイト」で名高いシェへラザードを思い出しました。
 これから、彼女の語り口をまねてみます。
幸多かれと願うライオンハート首相様、
 今宵、いろいろ夜伽をして参りましたのも、みな貴方様の前途に待ち受けている苦難を取り除き、また敬愛する日本の方々が、また戦争の加害者になって頂くのを思いとどまって頂きたいという私の真心から出たものです。伝え聞けばライオンハート首相にも多くのファンがいらっしゃるとのこと、そうした人々に幻滅を与えないために、イラクのような戦場に銃砲を持った軍隊をお送り下さらないで下さいませ。まして、アメリカ軍の占領を助けるために日本の軍隊が軍靴を踏みならして入ってくるなど、悪い夢を見るような思いがいたします。「百年の恋も一夜にして醒めてしまう」悲しみで一杯でございます。
 いえいえ、これは貴方さまにイヤミをいうためにお話しているのではないのですよ。いわば、「愛の鞭」とおとり遊ばしますように。
 それでは、東の空もあれあのように白々と明けそめて参りました。
では明日また。
阿部拝



拝啓     小泉首相殿
書簡9 イラクやアラブの文明の高さに理解を
劣化ウラン弾は野蛮の象徴

拝啓
小泉首相殿

 いよいよ政府は、イラク特措法の国会通過により、自衛隊のイラク派遣に踏み切ろうと準備を始めましたね。進軍ラッパの音色が響いてくるような感じです。
 しかし小生は、この自衛隊派遣がアラブ中東諸国の日本への評価が激的に悪化しないかと憂慮しています。どうか、現地の事情、アラブの歴史、国民性を充分理解して頂くこと切望します。
 小泉首相は、今、今月18日からのドイツ、ポーランド、イタリアへの訪問の準備に取りかかっていらっしゃることでしょう。
 オペラ好きの小泉さんのことだから、今度新たに付け加えられたイタリアを含めて、個の3国では、夏休みをかねて、ドイツ南部で行われるバイロイト音楽祭をはじめ、ポーランド、イタリアでのオペラ鑑賞のできることを大きな愉しみにされているとか。
 夏休みと言うことでもあり、小泉さんの心ははや、ヨーロッパの空に”風の中の羽根”膿瘍に舞い上がっておられることと思います。しかし、イラクの空では、劣化ウランの粉塵が空に舞い、その粉塵を吸った人は、被爆して癌になり、白血病に苦しんでいます。
 現在、日本各地で劣化ウランの人体への影響について講演しているアメリカの科学者(元ローレンスリバモア核兵器研究所研究員)ローレン・モレさんは、「自衛隊をイラクへ送ることは、自衛隊員に死刑宣告するようなものだ。彼らは劣化ウランの影響から免れることはなく、彼らだけでなく、妻や子どもたちにもその影響は及ぶだろう」と話しているそうです。
 彼女の通訳をしているきくちゆみさんは、国会議員全員と小泉首相、日本の政治指導者たち、イラクへ派遣される自衛隊員の方々とご家族に聞いてほしいと、訴えています。
 今回、この手紙で小生がいいたいのは、イラクやアラブ諸国の文明も、これら3国に比べ、決してひけをとるものでない、いや人類を明るい明日を示唆する素晴らしい内容を持っていることに気付いて頂きたいのです。
 それは、決して、米英や日本が援助して高める必要があると言う低い文明ではありません。
 今日はそのことを2、3お話して、イラクの真の復興に寄与するとは、どんな意味を持っているかと言うことを考えて頂きたく材料を提供いたします。
数年前ですが、東京芸大でプッチーニ-の『蝶々夫人』を従来の異国情緒に富んだ東洋蔑視調から「貧しい小国でも高貴な精神をもつ日本への憧れ」「精神が貧しい経済大国アメリカ」への批判 へと大幅に変えられたと聞いたことがありました。蝶々さんが自害をしたのも、 「武士の娘の名誉が挫かれた」という魂からだったんでしょう。
 さて小生がアラブ人の心の高潔さを示す例として紹介したいのは、中世アラブ騎士道の華とうたわれたサラハ・エルディン・アイユ-ブ(通称、サラデイン)のヒューマニズムです。
キリスト教ばかりでなく、イスラム教も平等に扱ったドイツの作家、レッシング(1729~1781)の「賢者ナ-タン」の中にで、サラデインを稀代の名君として紹介しています。
 とりわけ、かって1187年に、十字軍に占領されていたエルサレムを陥落させたサラデインは、キリスト教徒がエルサレムを占領したときアラブ人を皆殺しにしたにもかかわず、ヨ-ロッパのキリスト教徒を殺すようなことをせず、名目的な賠償金を受けとって釈放したといわれています。
 また、小生にはにわかに信じられない話ですが、医学の心得もあったサラデインは、僧侶の姿に扮装し、十字軍のリチャード獅子王の病気を治すために敵の城の中に入り治療にあたったと言われています。1950年代の末にカイロで封切られたエジプトの名監督ユーセフ・シャヒ-ンの『サラデインの勝利』にもこの感動的なシーンは登場しました。命の危険まで省みず敵の大将の病気の治療に赴くなどあまりに感動的でどう表現していいのか戸惑うほどです。
 セイフ・ワディ・ロマ-ヒ博士(一九七〇年代、駐日アラブ首長国連邦公使、上智大学の国際法教授)は、その小冊子の中で「日本を知る上で注目すべき事象の一つに『武士道』(侍精神)がある。偶然にもこれはアラブのForossyah (騎士道)と共通するところが多々ある。」と言及していました。このアラブの騎士道こそ武士道と共通するものです。新渡戸稲造博士の『武士道』は1938年にベイルートでフランス語訳からの重訳、湾岸危機の始まる数カ月前の1990年春には、バクダードで原文の英文からのアラビア語訳が出版され、讀んだ人々に感銘を与えています。
 かって労働大臣だった坂本三十次代議士は、閣議にこの『武士道』を持ち出し、日本人必読の書として勧めたと言う記事を朝日新聞で讀んだことがあります。あの頃はこうした硬骨な政治家がいたのだと懐かしく思い出されます。
 このアラブの騎士道と「無益な殺生をせぬ」「血を流さずに勝つをもって最上の勝とす」る武士道の精神は、尊い人命が大量破壊兵器兵器でいとも簡単に奪われてしまう惨劇を目撃する今日、われわれが取戻すべき大切な徳目ではないでしょうか。
 余りマスコミは書きませんが、ラムゼー・クラーク(元米国司法長官)の名著『湾岸戦争』には「21名の米国人捕虜1991年3月に無事帰国している。彼らが迅速な応急手当てや適切な医薬の使用など全般な医療看護を受けたたことは、米国自身も認めている。米国人捕虜に与えられた食糧、飲料水、防空壕は、殆どのイラクの兵士や民間人が入手できるものよりも良いものだった。」と書かれています。
 湾岸戦争の際、アメリカはイラクが科学兵器を持ってクウェイトに進撃したのではないかと、血眼になってクウェイト中を探したそうですが、何も見つからなかったそうですね。あの時国内の3分の1まで攻めてこられたイラクは一度も科学、生物兵器を使いませんでした。イラクが自国のクルド人を化学兵器で殺したという話も世界中に流布され定説になっていますが、あの話も証拠は上がってないのです。西欧のマスメディアの意図的な誤報が定着してしまっている一例に過ぎません。
 どうも、イラクの話になると阿部氏は肩を持ち過ぎだとおっしゃる方が多いと思いますし、言っている小生もうっとうしいことおびただしいので、イラクの話はここまでにして、アラブの元首が如何に国民一人ひとりのことを真剣に考えいるかの実例を御紹介します。
 それはエジプトの故ナセル大統領の言葉です。以下の言葉を知ったのは、1960年の初頭、もう40年ほど前の話ですが、当時余りに感動したので、英語から翻訳しておいたものがコンピューターに写してありました。
 国の原動力としての国民一人一人が尊いのだとうナセルの思想は次の言葉に込められています。
『私は一つの人類社会としての社会のために、また祖国全体のために、強健なもの、病弱なもののためにもひとしく力を尽したい。とくに私は病弱な人びとにたいして、これまでしてこれた以上に力になりたい。というのは、空腹の人間は威厳をもちえず、病めるものには力がなく、失業者には安らぎはなく、明日を信じられない人びと、自分たちを守ってくれる社会に生きいると信じられない人びと、しっかりした大地に立つ力を持ってない人びとともこれらのもの欠いてるからである。
革命は無能力者という意義を認めない、この言葉はわれわれの辞書から抹殺してしまった。各人はそのためにこそ生れたという本分を遂行する能力をもっているのである。各人は、それぞれ祖国への義務を果し、その建設へ貢献する力を持っているのである。』
 どうぞ、小泉首相も、劣化ウランの危険に曝される自衛隊やその家族にたいしても、ナセル大統領に劣らない思いやりを発揮して頂くことを祈念して今回の手紙を終わります。
 この手紙、いつも国会議員の全ての先生にお送りしているので、「外遊内歓」にお忙しい首相にもお読み頂くようお勧め下さいますよう、よろしくお願いいたします。
では、また。
阿部拝


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