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【第11夜】

懐かしい裕ちゃんの劇映画『アラブの嵐』

もう40年近い昔となってしまったので、1962年、日活が石原裕次郎と芦川い ずみをエジプトにおくり、エジプトの性格俳優および歌手として著名なシャデアらも 共演した劇映画『アラブの嵐』(監督:中平康)が製作されたのを記憶している日本 人も少なくなってしまったが、これまで数回上映され、好評を博しているのを埃及 の映画批評家から聞いたことがある。数年前、深夜放送で見た人も、広大なエジプト の遺跡という舞台装置の中でさっそうと活躍する裕次郎に魅力的だったといってい た。  主人公は、大日本物産社長であった祖父の遺言、「狭き日本を出て広き世界に生き よ」を実行に移すべく、温室育ちだった今までの自分に別れを告げた賢太郎(裕次 郎)。  

実は、彼は重役たちから煙たがられて体よくパリの支社に島流しになったのだった が、ベイルート空港で何者かに鞄をすり替えられてしまう。その鞄の中には独立を目 指すアラヤ国(アルジェリアを想定)のマイクロフィルムが入っており、そうとは知 らず、カイロに降り立った賢太郎はこの鞄を奪おうとする帝国主義からつけねらわれ る。  

かくて、雄大なエジプトの遺跡や大自然を背景に追いつ追われの鞄の争奪戦が続き 、最後は、エジプトの警察司令官(カーマル・シナウィ)が帝国主義者たちを逮捕し 、カイロ空港を飛び立つ寸前にアラヤ国が独立したと言うニュースをラジオで聞いた 賢太郎の顔が輝く。 当時のアラブ民族主義の雰囲気を反映したものであった。裕ち やんがホテルで歌う『月の砂漠』がナイルの川面をながれ、シャデアも3曲ほど歌っ ている。裕次郎が シャディア に舞台に引っ張り出されて、一緒に踊らされたとき、どじょうすくいの格好で踊った のもユーモラスだった。

 今カイロは人口が1000万を超えたといわれ、街、人や車の雑踏でひしめき合っ ている印象を与えているが、l962年当時には、街はまだ人通りも少なく、ピラミ ッド周辺も閑散としているのも今昔の感にたえない。  

シャディアはこの映画の中でアラヤの独立運動に挺身する女闘士として妖艶なベリ ーダンサー役をしているが、50年代後半から、70年代にかけて、エジプト映画界 屈指の性格女優として「泥棒と犬」「ナイルのほとりの物語り」など数多く名画に出 演した大女優である。  

シャディアは、この映画でナイトクラブでのシーンを日活多摩川でロケするために 来日し、日本を再訪したいとしきりにいっていたが、すでに映画界を引退したため、 その夢は実現されなかった。  

なお、この映画では、冒頭に、谷川俊太郎のテーマ曲が使われているが、この映画 の主題歌だった『アラブの嵐』(歌詞:大高ひさを 作曲:大久保徳二郎)は、この 映画の中では、歌われなかったけれど、裕次郎のCDアルバムに入っている。  

大高ひさおは『カスバの女』『銀座の恋の物語』で名高く、大久保徳二郎は戦前の 『上海ブルース』などで数々の美しい大陸メロデーをつくった作曲家で、この『アラ ブの嵐』もアラブ風のリズムを取り入れた素晴らしい歌である。

幸い「アラブの嵐」のビデオは、日活株式会社の「にっかつ名作映画館」の 一巻 として発売されている。 
¥3、800円(税別)



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