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【第21夜】

エジプト・アラブをテーマにした西洋音楽

 エジプトやアラブをテーマにしたオペラ、バレーといった西洋音楽も数多くある。 新アラブ千一夜(第15話)で紹介した『アイーダ』はその代表的作品で、1871 年にカイロのオペラ座で初演されたヴェルディの『アイーダ』の企画や考証にはエジ プト学者のマリエットが参加した画期的な歌劇であった。  

ベルデーがもっとも油の乗り切った時期に作ったこの『アイーダ』(4幕、ギスラ ンツオーニー作詞)は、イタリア・オペラの最大人気作の一つとなり、このオペラ は、 荘重、華麗な音楽とスペクタクルな場面で名高い

『タイス』
『アイーダ』に負けず劣らず魅力的な歌劇は、マスネの歌劇「タイス」で、アナ トー ル・フランスの小説をマスネが脚した台本によって、1894年にパリのオペラ座で 初演された。『ウェルテル』に続く、マスネの代表作といわれ、日本でも砂原美知子 のタイスによって藤原歌劇団が上演している。  

古代キリスト教の修道士パプニュス(オペラではアタニエル)が、アレクサンドリ アの頽廃と享楽の女性タイスを救おうとして彼女を改宗させたものの、彼自身はか えっ てタイスの肉体の美しさに魅了されて堕落していくという、精神と肉体の永遠の葛藤 を描いた美しい歌劇。  

タイスの『瞑想曲』は単独でも演奏されおり、幾つかのCDの中に入れられている。

交響組曲『シェヘラザード』
シェヘラザードトは、かの世界的に有名な『アラビアンナイト』の中で、シャーリ アール王に夜毎に不思議な物語を語る語りの名手。さしずめ、日本の講談などの語り 芸の元祖と言えるであろう。  

リムスキー・コルサコフの数々の作品の中で、『シェヘラザード』は最も広く演奏 され、親しまれている交響組曲で、彼の最高傑作に数えられている。

4つの楽章は、(1)海とシンドバッドの船、(2)カランダール王子の物語り (3) 若き王子と王女(4)バグダッドのまつり、海、青銅の騎士のある岩にての難破から なっている。  千一夜の各物語は、夜に語りはじめられ、「夜が白々と明け染める」翌朝に終わる ことになっているのに呼応して、この組曲の各4つの楽章も、明記されてこそいない が、それぞれ夜の物語から始まり、暁とともに終わることになっている。

1970年代の末、東京の武道館で、大正の末期に日本でも大好評だった無声映画 の最高傑作のセシル・デミルの超スペクタクル作品『バグダードの盗賊』が武道館で 上映されたときにも、交響楽団によるこの『シェヘラザード』が伴奏音楽として使わ れ、絶大な効果を生んでいた。

『アンタール』
アンタールは、6世紀に実在したアラブの詩人で英雄で、リムスキー・コルサコフ には、アンタールの英雄的な戦いや、恋人アブラをたたえる歌などを含むこの交響曲 『アンタール』を創作した。3曲ある交響曲のうち、現在でもよく演奏されるのは第 2曲である。  

イスラム圏の音楽から借用された旋律を素材として、濃い東洋的雰囲気をかもし出 しており、リムスキー・コルサコフがのちに『シェヘラザード』で大成するオリエン タリズムの先駆とみなすことができる。

また、旧約聖書「出エジプト記」に基ずいたシェーンベルグの歌劇「モーゼとアロ ン」(1930ー51作曲、第三幕は未完)があり、このほか、モーツアルトの『魔 笛』(1791年初演)はフリーメ-スン結社の秘儀や思想とも密接なつながりを示 しているといわれ、時代は古代エジプト、場所はイシスとオシリスの神殿の付近と設 定されいる。なおロッシーニの『モーセ』(1818初演)がエジプト様式の装置や 衣装が使い、『アイーダ』より20年前の1850年に初演されたフランスのD.F.E. オペールの『放蕩息子』では、時代考証にシャンポリオンのエジプト遺跡調査報告書 が利用され、衣装は完全にエジプト的で臨場感を演出し評判になったといわれる。

参考文献; 『最新名曲解説全集』(音楽の友社)ほか 


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